ヴァレリーは自転車の前を横切った猫がとても若く、首輪をしていなかったことが気になりました。彼女は猫を見かけた場所へ戻り、猫を探しました。数日後、同じ場所で猫が鳴いているのを見つけることができましたが近付くことはできませんでした。その後、ヴァレリーは何度か食べものをあげることができ、彼女は猫がひとりぼっちで生きている野良猫だと思ったそうです。

ヴァレリーは近所の人に猫のことをたずねてみましたが、誰も知る人はいませんでした。彼女は定期的に猫に食べものを与えながら、SNSで迷い猫を見つけるグループのページに猫の写真を投稿したり、近所にポスターを貼ったりと猫の情報を集めようとしました。
すると、飼い主を名乗り出る人はいませんでしたが、ある女性が路地をさまよっている猫を見かけたと電話をくれました。猫はひっそりと人目を逃れて暮らしていたようでした。

ヴァレリーは厳しい冬が来る前になんとか猫を保護したいと思いました。次第に猫は食べものをくれるヴァレリーを待つようになっていきました。
風の強い雨の日の夜、姿を見せなかった猫をヴァレリーはとても心配しました。しばらくして猫が負傷した足を引きずって姿を見せ、彼女は地元の保護施設シャトンズ・オルフェリン・モントリオール(COM)に助けを求めました。
それから1週間後、経験豊かなボランティア、ナディアの協力を得てヴァレリーは無事に猫を保護することができました。本格的な冬がすぐそこまで迫っていました。

私たちは猫にテミスと名前を付け、テミスは動物病院で診察と検査を受けました。
彼女には咬まれたうしろ脚に膿瘍ができていましたが抗生物質の注射をうってもらい、血液検査を受けました。幸い、FIV(猫免疫不全ウィルス感染症)とFelv(猫白血病)には陰性でした。
テミスは最初とても怯えていましたが、診察や治療の際には反抗的ではありませんでした。

私たちはここでテミスの哀しい現実を知ることになりました。
テミスからはマイクロチップが見つかり、飼い主がいることが分かったのです。しかし、連絡の取れた家族は2018年の4月に姿を消したというテミスのマイクロチップの登録を削除していて、引き取りを拒否したのです。
テミスに帰る家はありませんでした。

私たちはテミスの養育をマリーとパトリックの夫妻に委ねることにしました。
彼らの家で暮らし始めたとき、テミスはなかなかふたりに心を開いてはくれませんでした。
テミスは静かで落ち着いた環境を好み、大きな音や特に男性の声に反応していたそうです。さらに少しでも不安があると家の中を移動しようとせず、彼女の隠れ場所から離れようとしませんでした。
そんなテミスにマリーとパトリックはとても忍耐強く愛情を注いでくれました。

マリーとパトリックがテミスと向き合い、数か月が経ったときテミスはようやく自信を持って家の中を堂々と歩くようになりました。
テミスは二人に抱かれると喉をゴロゴロと鳴らし、キャットツリーを気に入りお腹が空くとマリーのところへ行っておねだりをするようになりました。

ヴァレリーが救助して1年が経った今月初めにテミスは彼女の写真に一目惚れをした家族のもとへ旅立って行きました。

ヴァレリーが通りで見つけた野良猫は、彼女に出会うまでとても傷つき、孤独でした。
テミスが辛い過去を忘れるには長い時間が必要でしたが、マリーとパトリックの献身的なお世話が彼女の心を温め、人間への信頼を取り戻すことができました。
テミスは今、新しい家で自信に満ちて幸せに暮らしています。