猫の飼い主が亡くなった後、家族の男性は猫が家に入ることを決して許さなかったそうです。猫はずっと玄関の前で中に入れてもらおうと鳴いていたそうです。しかし、その願いは叶いませんでした。猫はろくに食べものを与えられることもなく、ましてやお世話をされることもなく数年を外で暮らしてきたそうです。

猫の左耳は闘いの際の傷が感染症を起こし原形をとどめていません。顔にも体にもあちこちに戦闘痕が残り、殆どの歯が折れていて口内炎を起こして痛みを抱えていました。ボサボサの被毛に隠れた身体はやせ細り、去勢手術も受けていませんでした。獣医師の詳しい検査で、猫は半飢餓状態にあり、貧血と低タンパク質、重い上気道感染症であると診断されました。

猫は水分と抗生物質を投与され、重い上気道感染症の治療のために新薬を試されました。ノミの治療は受けられたものの、体力を付けなければほかの治療を進めることができませんでした。
猫は頭や顎を擦られると苦しい呼吸の中でも喉をゴロゴロと鳴らしました。人間の身勝手で辛い経験をしたにもかかわらず、猫は人間への信頼を持ち続けていました。

療養を始めて1か月を迎えようとしても、猫は上気道感染症と消化器に問題を抱えたまま体重をなかなか増やせずにいました。それでも表情には明るさを取り戻し、少しずつ苦痛から解放されているのが分かりました。
1か月を超えた頃からわずかに体重が増え始めた猫の体を早速きれいにすることにしました。
6日をかけて被毛をきれいにし、さらに去勢手術と歯科治療をうけることになりました。

念入りなブラッシングの後、猫をお風呂に入れました。幸い彼からノミやダニは見つからず、厚い被毛からは泥の汚れが落ちて行きました。
お風呂の間、彼は天使のように穏やかで乾かす間は喉をゴロゴロと鳴らして嬉しそうでした。
きれいに刈った被毛の下から背骨がくっきりと分かるほど痩せた身体が現れました。

私たちは猫にハーローと名前を付けました。
ハーローを保護して1か月半が経ったとき、彼はまだ貧血と低タンパク質を改善しきれていませんでした。
それでもハーローは殆ど歯を失っているにもかかわらず、懸命に食べて保護したときから約1.4kg体重を増やすことができました。

ハーローはようやくほかの猫たちと過ごすことができるようになり、彼の周りには子猫たちがたくさん集まって過ごすようなっています。
子猫たちは穏やかで愛情豊かなハーローに寄り添ってお昼寝をするのが大好きです。
子猫達に寄り添うハーローは、目を輝かせて生き生きとした表情を見せています。

出会った頃のハーローはたくさんの猫たちを保護してきた私たちでさえ、これほど症状を抱えた猫はあまり出会ったことが無いというほど深刻な状態でした。正直何度も諦めかけたこともありましたが、ハーローの生きようとする意志はゆるぎないもので私たちはハーローの人生を取り戻すために彼を支え一緒に戦いたいと思いました。
1か月余りの療養で見違えるほど元気を取り戻したハーローは今、子猫たちの中で新たな喜びを見つけてさらに輝いています。