私たちは猫にラントと名前を付けました。
ラントはシェルターに収容されたとき、体中のあちこちに傷口が開いた戦闘痕があり、ひどい上気道感染症で苦しんでいました。とても痩せていて最悪の状態だったのです。
動物病院に入院し、治療を受けたラントは数週間後に健康を取り戻し、新しい家族を見つける準備のために私の自宅でお世話をすることを申し出ました。
私の自宅には大人の猫たちが数匹暮らしていて、ラントが人間との暮らしに慣れるには適した環境だと思ったからでした。

私の自宅で暮らし始めたラントは、長い間苦しんできた痛みと不快感からようやく解放されてその個性を開花させていきました。
彼は安心して過ごせる家の中にいられることにも、飢えを心配する必要が無いことにも、私たちと暮らす猫や犬と遊ぶことにも幸せを感じていました。
ラントは周囲に愛情を示すことをためらわず、瞬く間に私たち家族との暮らしに溶け込んでいきました。

数週間後、ラントはすべての準備を整えることができましたが、私はラントと別れることができなくなっていました。ラントは私たち家族にとってすでに大切な家族の一員になっていたのです。

獣医師は彼が約14歳と高齢であり、FIV(猫免疫不全ウィルス感染症)に陽性だと言いました。
しかしそれはラントの人生に何ら影を落とすことはできませんでした。
それどころか、ラントは私たちとの暮らしの中でひときわ輝く個性を発揮することになりました。

数日後、私はシェルターから1匹の子猫を連れて帰り養育を始めました。
ひとりぼっちだったその子猫に私たちはアルテミスと名前を付けました。
アルテミスは500gにも満たない小さな子猫で、私は母猫のいない彼女が生き延びることができるか確信がありませんでした。

アルテミスが自宅に到着したとき、ラントはアルテミスに気付くとすぐに近づいて体をきれいにし始めました。そして、愛おしそうに抱きしめたのです。それ以来ラントはアルテミスの父親代わりとなり、愛情を注いでお世話をしました。
アルテミスはラントの温もりの中で希望を見つけ、その後、順調に回復に向かうことができました。

4月の下旬のことでした。
後にドリーと名付けた子猫がトラックのエンジンブロックから見つかり、シェルターへ連れてこられました。
ちょうどその頃、シェルターには物置で発見されたリースという子猫が収容されていました。
お互いにひとりぼっちで見つかった2匹の子猫はペアで養育することになり、ラントがいる私の自宅でお世話をすることになりました。

発見された当初からドリーはとても怖がりでしたが、ラントに出会ったとき彼女は大きく変わりました。
ラントは到着したドリーのキャリーケースにぴったりとつくと、『早く扉を開けてあげて。』そんな目をして私を見上げました。
ラントがドリーの身体をきれいにし始めると、ドリーは瞬く間に落ち着きを取り戻しお腹を見せてラントに甘えたのです。
その出会い以来、ドリーは家の中でラントに甘えるために彼のもとへ走っていきました。

ラントは一度に3匹の子猫の父親代わりを買って出て、それぞれにひとりぼっちだった子猫たちに彼らが必要とする愛情を注ぎました。
私たちは誇らしげに子猫のお世話をするラントの生き生きとした姿に幸せを感じました。

人生の大半を路上で生き抜き衰弱して保護された野良猫は、自分を救い苦しみから解放してくれた人々の愛情を忘れませんでした。
ラントは愛情を必要とする小さな命に、自分が受けた愛と同じ愛を注ぐことに誇りを感じているように見えます。