私たちがモリッツを家族に迎えて数週間が経ったとき、ひどくやつれた様子の生姜色と白の猫に気付きました。
とても弱々しく見えたので心配でしたが、その猫は私たちをとても怖がっていて20m以内に近づくことができませんでした。

猫を亡くした後、私たちは庭に現れる近所の野良猫たちが気になるようになりました。野良猫たちはお腹を空かせているに違いありません。それでベランダやテラスで食べものをあげるようになりました。
中には夜中の決まった時間に現れる猫たちもいましたが、猫がその中の1匹なのかは分かりませんでした。

しばらくして、その猫が急に姿を見せなくなり私たちは心配していました。
再びその猫が姿を見せたとき、頭と首のあたりに傷を負っていました。恐らくほかの猫との戦闘痕でしょう。

猫は庭に座ってリビングの中を見ていました。心配した妻が猫に近付こうとしましたが、やはり猫は私たちを怖がってなかなかうまくいきませんでした。

私と妻は彼にキャットフードを食べさせようとしましたが、猫は決して私たちの前では食べようとしませんでした。
私たちは仕方なく家の中に入って扉を閉め、猫の視界に入らないように遠くから彼を見守ることにしました。
すると、扉を閉めて10分くらい経って猫が食べているのが見えました。
その後も私たちはキャトフードを持って何とか猫に近付こうと試みたのですが、猫は逃げてしまい私たちの前で食べようとはしませんでした。

私と妻は猫と視線を合わせないようにして毎日少しずつ、慎重に距離を縮めることにしました。
数メートル離れた所に座って猫が食べるときは彼を見ないようにしました。
それが私たちに悪意が無いことを知らせる唯一の方法でした。

やっと手が届く距離まで近づけるようになったとき、食べものを置いたらすぐに猫の頭を軽く触りました。
最初の数回はしり込みをしていた猫でしたが、しばらくするとそっと撫でることができるようになりました。

私たちはかかりつけの獣医師に事情を話してノミやダニ、お腹の虫を駆除する薬をもらうことができました。
少しずつ、少しずつ猫に触れられることに慣れてもらいながら治療を続け、ようやく猫の傷を治すことができました。
猫の手当てをしていくうちに、私と妻はその猫を家族に迎えたいと思い始めていました。
その想いを決定的にしてくれたのは他ならぬモリッツでした。
モリッツは猫をすぐに受け入れ、猫が家の中の暮らしに慣れるのを手助けしてくれたのです。

私たちは猫にペッツィと名前を付けました。
ペッツィは初めて動物病院で診察を受け避妊治療を済ませました。
病院から帰宅したペッツィは私の膝に潜り込むとゴロゴロと大きく喉を鳴らしました。

はじめての出会いから約4か月。あれほど私たちを怖がっていたペッツィは、食べることが大好きで食事の後は毎回私たちの膝の上で寛いでいます。
ペッツィやモリッツが穏やかに寛いでいると私たちは幸せを感じます。