その日の前日、私たちは足にケガを負った子猫を保護した別の住人から連絡を受け、引き取った子猫の療養を始めたばかりでした。
その日新しく迎えた子猫は上気道感染症を患い、目に炎を起こして腫れあがった両目が塞がった状態でした。感染症にかかった子猫は嗅覚が鈍くなり食欲を失くし、路上でとても衰弱してしまいます。引き取った子猫もしばらく食べることを止め、極度の脱水状態に陥り危険な状態でした。

私たちが最初にしたことは、滅菌ガーゼとぬるま湯で彼女の目をきれいにしました。養育室が塞がっていたため新聞紙とキャリーケースを入れたケージを使って子猫のための個室を作りました。
小猫は離乳しているようですが、自分から食べそうにはなかったので、数時間ごとに注射器で栄養補給をします。私たちは粉ミルクを溶いたものにチキンのベビーフードと子猫用のパテを混ぜたものを子猫の口元に少しずつ付けてみました。子猫が舐め始めたのでゆっくりと注射器で与え始めました。

子猫のお腹が満たされ落ち着いた後でお風呂に入れました。外から保護した新しい子猫は新たな感染を防ぐために、害虫を洗い流すためのお風呂に入れます。はじめは抵抗しますが、殆どの場合あたたかなお湯でさっぱりするので暴れることはありません。この子猫も少なくともここ数日はかなりのストレスを抱えていたはずです。
はじめは抵抗しようとしましたが、すぐにおとなしくなりました。お風呂から上がり、さっぱりした子猫は緊張が途切れたのか深い眠りにつきました。

獣医師の診察を受けた子猫は残念ながら視力を回復することが難しいと診断されました。通常、その診断を受けた場合これ以上の感染を防ぐために眼球の摘出手術を受けます。しかし、子猫は手術を受けるには年齢と抵抗力が小さすぎました。獣医師が処方した抗生物質で腫れを抑えながら、私たちは子猫を健康に戻すことに集中しなければなりません。

私たちは子猫をアリアと名付けました。痛みを抱えたアリアを見守るのはとても辛かったのですが、2週間後には感染症が治まり始め、アリアは喉を鳴らして普通の子猫に戻ってきました。
ひとりぼっちの子猫は母猫に教わることも兄弟で学ぶこともできないので人間がその代わりをしなければなりません。拳固を取り戻していくアリアに私たちはたくさんのオモチャと好奇心をくすぐるものを与える必要があります。遊びを知らない子猫が人間の手で遊んだり噛まないようにするのも人間の大事な役目です。
アリアの場合、視力に変わる感覚を使い補う訓練が必要でした。私たちはおもちゃを使って彼女の空間認知を助けました。遊びの中でアリアは聴覚を使って深さや高さを感じたり、ジャンプして高いところへ飛び上がることを学んでいきました。

私たちはアリア社会性をより高めるために一緒に暮らす子猫を探すことにしました。別の救助者からアリアより少し年上でオスのグアポを譲り受けました。はじめはシャイだったグアポは少しの間に私たちと馴染むことができました。
うまくいけばアリアとグアポはお互いの遊び相手となり支え合うことができます。
私たちはアリアとグアポの出会いをゆっくりと進めました。

まず少し開いたドアを挟んで食事をし、その隙間からお互いの匂いをかぐことができるようにしました。
次にふたつのオモチャを使い接触しない程度の距離で一緒に遊びました。
最終的に同じオモチャで遊ばせると、みんなが驚くほど数分で一緒に遊び始めてたくさんのおやつをもらいました。それから一緒に食事をするようになり、一日中一緒に過すところまで全く問題はありませんでした。
アリアはグアポがいることを楽しみ、グアポはアリアに年上を主張して一生懸命に身づくろいをしています。
グアポの存在はアリアを安定させました。そしてアリアのすぐれた記憶力は彼女の遊びをより活動的にしました。

アリアの前日に迎えた子猫カービーは、健康を取り戻して2か月もたたないうちに新しいママのもとへ旅立って行きました。
幸いにもアリアの目は最終的に摘出す術の必要が無いと診断されました。
そして、出会いから5か月が経った3月のはじめにアリアとグアポは一緒に永遠の家へ旅立って行きました。

ただ残念なことに、アリアには母猫と兄弟が居たことが分かっていましたが、私はどうしても彼らと出会うことができませんでした。
私たちは病気の子猫を治療する時間と労力と費用をかければかけるほど多くのレスキュー活動に携わる人たちと同じように、根本的な問題に取り組む意欲を駆りたてられます。
1匹でも苦しむ猫がいなくなるように。