庭に置いた犬用の水のボウルから4匹の子猫達が水を飲んでいました。
私たちの声を聴くと、フェンスの向こうへ抜け出して茂みの中へ消えてしまいました。
母猫の姿は見当たらなかったので、気になって近所に子猫のことを聞いてまわりました。
でも、子猫達を知る人も見かけた人さえいませんでした。

きっとお腹を空かせているに違いないと思い、子猫達が戻って来ることを願いながら家の外に食べものを置くことにしました。
私は子猫達が食べる姿を見ることができませんでした。
でも、私が食べものを置いて30分もしないうちにいつも無くなっていました。
子猫たちは人間が怖くて、こっそりと現れては食べていたようです。

数日後、裏口で子猫の鳴き声が聞こえました。
見に行くとあの4匹の中の1匹がお腹を空かせて鳴いていました。

子猫はまだ人間が怖くて、私が急に動くと走って逃げてしまいました。
私は子猫が怖がらないように柵の傍に食べものを置いて庭に座って子猫が現れるのを待つことにしました

姿を見せた子猫は警戒してなかなか食べものに近付こうとしませんでした。
そこで私は、猫の鳴き声をまねて子猫に声をかけました。
すると子猫はゆっくりと食べものに近付いて来ました。
垣根の下から慎重に入ってくるとようやく食べ始めました。

1匹で現れたことが気になりましたが、その後も残りの3匹の姿を見ることはできませんでした。

子猫は人間と接した経験の無い野良猫らしく、私の動きにとても敏感でなかなか近付くことができませんでした。
でもしばらくすると、子猫は私がじっとしている間は私の傍で食べるようになりました。
その後も子猫は1日に何度か庭に現れて、ガラス戸から顔を覗かせて自分が来たことを知らせました。
最終的に子猫は私の手から直接食べるまでになり、私に信頼を置き撫でられることにも慣れて行きました。
私たちは子猫を家に迎えるときが来たと思いました。
私がビリーと呼んでいた子猫は私たちの家族に加わりました。

私たちは子猫をオスだと信じてビリーと呼んでいましたが、動物病院で診察を受けたビリーは何とメスだと分かりました。
ビリーはずっと外で暮らしていたにも拘らず、嬉しいことに健康上の問題はひとつも見つかりませんでした。
ビリーは避妊治療を受け、予防接種と寄生虫の駆除を済ませました。

最初のうちビリーは家の中で落ち着かない様子をしていました。
そんなビリーは息子とすぐに仲良くなり、息子は学校から帰るとビリーと庭で遊ぶのが日課になりました。
するとビリーは息子を玄関のドアの傍で待つようになり、彼が帰ってくると必ず『お帰り』の挨拶をしました。
そして保護犬だった私たちの犬は、ビリーをとても気に入ってすぐに寄り添ってくれるようになりました。
2匹は抱き合って眠るようになり、家の中での暮らしに次第に慣れて行きました。

息子が帰ってくる時間が近付くと、ガラス戸の前にはビリーと犬が並んで座って待っています。
私は2匹の並んだ姿を見るのがとても好きです。
ビリーの穏やかで希望に満ちた後ろ姿に私は幸せを感じます。

私たちは猫を飼うつもりはなかったし、ましてや野良猫に選ばれるなんて思ってもみませんでした。
お腹を空かせたビリーは裏口にチキンを求めてやってきました。
たぶん、自分の家だと分かっていたのでしょうね。