周囲に他に猫の姿は見当たらず、子猫の食べものになりそうなものもありません。
廃車になった車やゴミが積み上げられたその場所に子猫がハリケーンを凌ぐ安全な場所もありません。
私はそこに子猫を置いていくことはできませんでした。

地元の保護施設に連絡したのですが手いっぱいの様子で迎えに来てはもらえませんでした。
勤務を終えた私は子猫と一緒に自宅へ向かいました。

自宅に帰ってすぐに夫のザックとスーパーへ走り、キャットフードとベッド、猫のトイレを購入しました。
子猫はとても緊張した様子でしたが、しばらくすると私たちの家が安全な場所だと分かったようでした。
子猫の前にキャットフードを置くと一直線に駆け寄って食べ始めました。
私たちは3匹の犬と暮らしています。
子猫にとっていい環境とはいえません。
しかし、ハリケーンが迫る中で子猫をシェルターへ連れて行く時間はありませんでした。
お腹を満たした子猫をお風呂に入れ、新しいベッドに入れると子猫は安心して眠りにつきました。
私たちは子猫がたぶんメスだと思い、フィレンツェと呼びました。

3日後、フィレンツェが突然食欲を無くし、ぐったりと元気をなくしてしまいました。
動物病院へ連れて行くとフィレンツェは体温が低下していたのです。
獣医師のアドバイスに従って、温熱パッドを使って温めました。
さらに温めたお米を靴下に入れてカイロを作りフィレンツェの傍に置きました。
食事は体力を回復させるために処方された栄養価の高いペースト状のものをシリンジで与えました。
それから動物病院でフィレンツェがオスだと分かり、私たちは子猫の名前をストームと改めました。

翌朝目を覚ましたストームは元気を取り戻し、見つけたときと同じように大きな声で鳴きました。
抱き上げると私たちに体をぴったりとくっつけてまた眠りました。
見つけた場所で心細い思いをしていたからかストームはひとりにされるのをとても嫌いました。
温熱パッドとカイロで温め続けるとストームは次第に食欲を取り戻し、ミルクをたくさん飲めるようになりました。
シリンジを自分で手繰り寄せお腹いっぱいになるまで飲みました。

エネルギーを蓄え、元気を取り戻したストームに心を奪われた女性がいました。
私の同僚で通信指令係をしている彼女は猫3匹と暮らしています。
彼女はストームに一目惚れをして家族に迎えたいと言ったのです。
ストームは彼にとって理想的な家を見つけました。

同僚の猫の1匹はストームを一目で気に入り、早速ママ代わりにお世話を始めました。
動物好きな彼女の家には猫の他にも犬が居ましたが、彼らはストームを快く迎え入れ今ではストームが家族の中心にいて常に注目を集めているようです。

ハリケーンを前にストームと出会った私は幸運でした。
小さくひとりぼっちだったストームはもう淋しい思いをすることはありません。
常に誰かに見守られて暮らしています。
私と夫も少し離れた所から彼の成長を見守り続けたいと思っています。