もう何も失うものはありませんでした。
CDを見た私はニューヨーク、ウィルスボロの自宅近くの骨董品店でいくつかの商品を購入して出品用の写真を撮っていました。

すると、飼い猫のメルセデスが興味津々でフレームの中をウロウロし始めたのです。
私は撮影に集中しようとしていたのですが、メルセデスは私の気を引こうと商品の傍でポーズをとり始めたのです。
彼女は商品の傍でいつものように立ち上がりました。
私はメルセデスが商品の傍で佇む写真を投稿し始めました。

意外にもメルセデスが写った写真の方が売り上げが伸びて行きました。
1日に3件ほどのコメントをもらうようになり、しばらくするとメルセデスはちょっとした人気者になっていったのです。

オークションサイトの顧客たちは、メルセデスがどのくらい撮影に付き合うのかを気にし始めて私に質問するようになりました。
しかしメルセデスが自主的に撮影に協力していることを知ると安心したようです。
実際、撮影の準備をする私が『メルセデス、ちょっと写真を撮るよ。』と声をかけると彼女は廊下を走って来て商品の傍に立ち上がりました。

メルセデスは野良猫が産んだ数匹の子猫の1匹で、彼女だけが生き残ることができました。
写真を撮り始めた頃のメルセデスは私の手のひらに載るほど小さくて彼女が傍にいることで商品がとても大きく見えました。
すっかり成長した現在のメルセデスだと商品が小さく見えてしまうかもしれません。

メルセデスは犬のアナベルと大の仲良しで、一緒に遊んでいるうちに自分の方がボスだと主張するために2本足で立つことを覚えました。
撮影に飽きてくると私は彼女におやつをあげて付き合ってもらうこともありますが、基本的にメルセデスは撮影を楽しんでくれています。

オークションサイトをきっかけに人気者になったメルセデスは、おもちゃの広告に起用されたりメディアに取り上げられるほど有名になりました。
オークションサイトの顧客のひとりはメルセデスを高額で譲ってほしいと言ってきたこともあります。
勿論丁重にお断りしました。

私はもともと犬派の人間でしたが、メルセデスは私の心を奪った初めての猫です。
私にとっても妻のリンダにとってもメルセデスは特別な猫、大事な家族です。
撮影に没頭する私の気を引こうとしたメルセデスは私の窮地を救うきっかけを作ってくれました。
言うまでもなく、メルセデスはずっと変わりません。