2012年、テネシー州で暮らす私は近所に姿を見せるべっこう色の痩せた野良猫に出会いました。
食べ物を探してさまよっているようですが、近付こうとすると警戒して逃げられてしまいました。
そこで私は野良猫に食べものを残しておくようになりました。
空腹を我慢できなかった野良猫は食べものに抵抗できませんでした。

ある日、野良猫はボウルの食べものをきれいに平らげると振り返って私に近付いて来ました。
そして私が差し出した手の匂いを嗅ぐと、『ごちそうさまでした』とでも言うように私の指を舐めるようになりました。

私に信頼を置き始めた野良猫を自宅に連れて帰ることにしました。

私の家に初めて一緒に帰った日、家に入って5分も経ったでしょうか。
野良猫は私が腰を下ろしたカウチに飛び乗ると私の腕を抱いてうずくまって眠り始めました。
私はちょっとびっくりしましたが、せっかく眠った猫を起こしたくありませんでした。
結局、猫が目を覚ますまで私はカウチから動くことができませんでした。
野良猫はいつの間にか私の心の中に忍び込んでいました。
私は野良猫をボッシーと呼ぶことに決めました。

私はボッシーの飼い主が居ないか確かめるために近所に尋ねて回りました。
しかしボッシーを知る人はいませんでした。
ボッシーは捨てられたのかもしれない、そんな気がしました。

ボッシーは私との暮らしを気に入ってくれたようでした。
私の腕が空いているときはいつも抱き締めて眠るようになっていました。
私が留守の間に部屋中を散らかしていたので注意したことがありました。
すると家具の下から見上げたボッシーの目は全く罪悪感を持っていませんでした。
結局私はボッシーのお腹を擦ってしまいました。

健康診断のためにボッシーを動物病院へ連れて行ったときでした。
獣医師はボッシーがFIV(猫免疫不全ウィルス感染症)に陽性だと言いました。
ボッシーはその後もずっと健康に過ごしてきましたが、私はひとつだけ心に決めたことがありました。
私はボッシーと過ごす時間をどんなに小さなことでも大切にしようと思いました。

ボッシーと暮らし始めて私は毎朝、ボッシーの温かいハグで目を覚まします。
6年目を迎えた今も、ボッシーは私の腕を抱きしめてくれます。
何度か引っ越しをしましたが、私の傍にはいつもボッシーがいることだけは変わりませんでした。
私とボッシーの6年間は彼女が私の腕を抱き、私が彼女のお腹を擦って過ごしてきたのです。

ボッシーと出会った頃の私はうつ病の診断を受けて先の見えない辛い日々を過ごしていました。
そんな私に必要とされる幸せと無条件の愛情をくれたのがボッシーでした。
ボッシーは私の傍にいることで私を救ってくれました。
何気ないボッシーとの暮らしが私にとってはかけがえのない宝物です。