ベルは彼女をとても可愛がってくれた男性と幸せに暮らしていました。
ところが男性はベルの目の前で心臓発作を起こして突然亡くなってしまったのです。
最愛の飼い主を亡くしたベルは強いトラウマを抱え、不安と恐怖のために固く心を閉ざしてしまいました。
知人からベルの話を聞いたニューヨークの保護活動家ベス・スターンが駆けつけたとき、シェルターは人を近付けようとしないベルに新しい家族を見つけることを諦めていました。
ベスは1日も早く新しい家族を見つけるべきだと考え、自宅に引き取ってお世話を始めたのです。

同じニューヨークでボランティアとして保護活動に参加している私は、敬愛するベスのSNSでベルの写真を見つけたとき、椅子から落ちそうになるほど衝撃を受けました。
私は一目でベルに心を奪われてしまったのです。
ベルにもう一度人生を楽しんでほしい・・・それが簡単でないことは分かっていましたが、私はベルと向き合う覚悟を決めてベスに連絡を取りました。
2018年4月15日、ベルはバーブラと名前を変え、私の家族に加わりました。

最初の日、バーブラはキャリーケースの中でブランケットに潜ったまま、なかなか出てこようとしませんでした。
バーブラは何のために私の家にいるのか分からなかったのです。
私はこの家が彼女にとって安全な場所だと理解してもらわなければなりませんが、それにはかなりの時間が必要だと分かっていました。
バーブラの信頼を得るまでには彼女のペースで辛抱強く距離を縮めていくしかないと覚悟していたので、バーブラに声をかけながら彼女の好きなようにしてもらおうと思いました。
しばらくすると、キャリーケースを出て周囲の探検を始めましたが、私の横を素通りし、結局食べ物にも手を付けようとはしませんでした。

2日目、バーブラは初めて食事をしました。
相変わらずキャリーケースに身を潜め、ときどき周囲を探検しました。
バーブラは時間をかけて、この家が安全かどうかを確かめていました。
ところが3日目、その日は雷が鳴っていました。
怯えたバーブラは不安になり、床の下に隠れるとそこから出ようとしませんでした。
その日の私はバーブラの顔を殆ど見ることができませんでした。

バーブラは物音に敏感に反応し、外からサイレンの音が聞こえると緊張して体がこわばるのが分かりました。
誰かがドアを開けると物陰に身を潜めてしまいました。
その後も1日の殆どを隠れて過ごす日もあり、バーブラがこの家を安心できる自分の家だと感じるにはまだまだ時間が必要でした。
しかし私のベッドを気に言ったバーブラは、ある夜ベッドに入った私の傍で眠りました。
バーブラは私に興味を持ち始めていました。

ときどき私の後を付いてまわるようになったバーブラは私の足に爪を立てました。
私はしばらく家の中でニーハイブーツを履いて過ごし、グローブをしてバーブラに手を差し出しました。
バーブラの不安と恐怖が少しずつ薄れていく中、私はバーブラとの距離に試行錯誤を繰り返しました。
一緒に暮らし始めて1か月が経った頃、バーブラの攻撃性が次第に薄れていきました。

時間をかけ、バーブラのペースで距離を縮めた私は彼女と抱き合うことができるようになりました。
バーブラはほかの人ともふれあえるようになってきました。
不思議なことに、保護活動をしている人には安心することができるようです。
彼らの経験がそうさせるのか、バーブラに何か感じるものがあるのか私には分かりません。

バーブラはあるときから私の保護活動を手伝ってくれるようになり、その活動がとても気に入っているようです。
バーブラは私の活動のパートナーになっています。
バーブラが傷ついた心を完全に癒すにはもっと時間が必要です。
しかし、バーブラと私の出会いはお互いの人生に大きな意味を持ち、不可欠なものであることは間違いありません。
私はバーブラと結び付けてくれたベスに心から感謝しています。