子供が会話を覚える2歳になったとき、アイリスは一言も話しませんでした。
アイリスは私と出さえ視線を合わせることはなく、私はいつも絵本越しに娘を見ていました。
アイリスはお風呂に入ることが嫌いでした。
車や自転車に乗るのも嫌がり、夜眠ることもできませんでした。
自閉症の診断を受け、一生言葉を話すことはないと言われたアイリスのために私たちは何でもしようと思いました。

一般的に行われているコミュニケーションに関わる療育以外にもアイリスの助けになることは何でも試しました。
アイリスが最も興味を持ったのが絵を描くことでした。
イーゼルに絵の具が垂れるのを怒ったアイリスのために、コーヒーテーブルの上に壁紙を貼ると、アイリスはすぐに色を塗り始めたのです。
絵を描くアイリスはとても楽しそうで、絵を描くたびに2時間以上集中して描き私たちを驚かせました。

自閉症に関する様々な本を読んでいた私たちは、セラピーアニマルの効果をときどき目にしました。
馬が大好きな私はアイリスを馬に会わせたのですが、彼女はあまり興味を持ちませんでした。
セラピードッグを試したときは、しっぽを振ったり舐められることを嫌がりました。
その後セラピーキャットも試してみましたがそれも失敗に終わり、私たちはしばらくの間動物を探すことを諦めてしまいました。

数年前のクリスマスのことです。
兄のガールフレンドがクリスマス休暇の海外旅行のために、飼い猫を預かってくれる家を探していると聞き、私たちが引き受けることにしました。
すると、アイリスはとても美しいサイべリアンとすぐに仲良くなったのです。
そのとき、私たちは相性について気付きました。
アイリスは相性のいい動物と出会えていなかったのだと気付いたのです。
私たちはアイリスと相性のいい動物を探すために試行錯誤を繰り返し、様々な可能性を試しました。

そして、1歳のメインクーンに出会いました。
優しく穏やかな性質のメインクーンですが、水を好むと言われる猫に私たちは特に大きな期待をしていませんでした。

メインクーンのチューラが初めてアイリスの待つ部屋に入って来たとき、彼女は迷わずアイリスの膝に飛び乗り、アイリスはチューラを受け入れました。
チューラは瞬時にアイリスを理解したようでした。
そのときアイリスの人生は変わり始めたのです。

チューラは常にアイリスを助けたい、アイリスがしていることに関わりたいと思ったようでした。
チューラと暮らすようになったアイリスは不安が軽減されて常に穏やかな時間を過ごせるようになりました。

そして、それまでできなかったことがチューラと一緒に楽しむためにできるようになって行ったのです。
水が好きなチューラと一緒にお風呂に入るようになりました。
チューラはシャンプーが苦手なアイリスのためにお手本を見せてくれました。
車や自転車で出かけることが好きなチューラは、アイリスをそれまで行ったことのない場所へ行けるように助けてくれました。

一緒に暮らし始めて数か月が経ったとき、その日は朝から雨が降っていました。
私は画材の一式をガーデンルームに持ち込んだ後、キッチンでアイリスとおやつを食べていました。
ガーデンルームに戻るとチューラがテーブルの上でアイリスが来るのを辛抱強く待っていたのです。
チューラは絵を描くアイリスの傍に常に寄り添っていました。
チューラは多くの意味でアイリスの忠実なアシスタントでした。

チューラはアイリスに仲間意識や友情を提供し、一切のプレッシャーをかけずに娘の傍に居続けることができました。
チューラは彼女たちを見守る私たちにもアイリスを励ましたり教えたりする方法をたくさん教えてくれました。
言葉を必要としない彼らの結びつきは私たちには特別なものに感じられました。

そしてある日、私はアイリスがチューラに向かって話しかけているのを見て驚きました。
それは短い言葉でしたが、その後アイリスは少しずつ私たちとも短い会話をするようになりました。

チューラと暮らし始めて4年が経過し、アイリスは苦手だった水が大好きになりチューラと一緒にプールを楽しんでいます。
夜眠ることができなかったアイリスは朝が一番元気でいられます。
そして私たちとアイリスの会話は少しずつ増えています。

初めてチューラに会ったとき、私たちは小さなメインクーンがこんなにもたくさんの問題を解決するとは思いませんでした。
チューラとの出会いは、アイリスの人生に鮮やかな彩りを加えてくれました。