私は地元でTNRとレスキュー、そして養育ボランティアの活動をしています。
その日保護した野良猫はその地域で最後のオスの成猫で、それまで多くのメス猫に子猫を産ませていました。
野良猫は大きな頬を持っていて、病気が原因でなければそれは闘いの中で生きていた証でした。
人間に接触したことが無い野良猫は、人間を恐れてシャーッという威嚇の音を立てましたがそれ以上攻撃的ではありませんでした。

自宅に連れて帰った野良猫を私たちはスタッドマフィンと呼ぶことにしました。

スタッドマフィンのケージの中には彼の身体がすっぽりと収まる筒形の箱がありました。
彼は私たちが顔を見せるとその中で立ち上がり、顔だけ出して私たちを見ていました。
私たちから隠れたいけど気になって見てしまう・・・なかなか笑わせてくれる憎めない個性を私たちは愛おしく思いました。

顔を出したスタッドマフィンの頭を思い切って擦ってみました。
彼はビクッと目をつぶります。
スタッドマフィンの警戒心と恐怖はまだ無くなっていませんが、少しずつ辺りを物色したりキャトツリーに頭を擦りつけたり、隅に頭をぶつけたり自分のものだと主張する様子も見られました。
保護して4日目の早朝、私はスタッドマフィンを動物病院へ連れていきました。

獣医師の診察を受けたスタッドマフィンは6歳~8歳の間であることが分かりました。
飼い猫の平均寿命は17歳ですが、一般的に野生で生きる猫の寿命は5歳から7歳と言われています。

スタッドマフィンには上気道感染症と歯周病が見つかりました。
人間を知らずに生まれたスタッドマフィンに私たちは愛情を感じて生きてほしいと思いました。
私たちはスタッドマフィンを健康に戻し、新しい家族を見つけることを決めました。

スタッドマフィンの上気道感染症は思った以上に手強いものでした。
抗生物質の投与が始まって1週間が経っても鼻の奥からはまだ異音が聞こえていました。

少しずつ私たちに触れられることに慣れてきたスタッドマフィンでしたが私たちが近付くと箱から顔だけを覗かせていました。
それでも次第に私たちの手からおやつを食べるようになっていました。
軽い感染症のあった目に薬を使うことにも慣れていきました。
ただスタッドマフィンの胃はドライフードになかなか慣れなかったので、私たちは茹でたチキンとお米を用意しました。
スタッドマフィンはゆっくりと私たち人間が彼に危害を加えるつもりはないと理解していったのです。

数週間をかけて、スタッドマフィンは健康を取り戻すことができました。
必要な予防接種と去勢手術を終え、次のステップへ進む時期を迎えました。
しかし、スタッドマフィンはまだ人間に怯えて殆どの時間を私たちから隠れて過ごしていました。
私たちはスタッドマフィンが住み慣れた場所に戻りたいのか彼に決めてもらうことにしました。
スタッドマフィンを保護した場所へ連れて行きました。

キャリーケースの扉を開けて私たちは少し離れました。
突然開けた外に戸惑っていたスタッドマフィンに私が声をかけました。
『あなたの家よ。帰りなさい。』
スタッドマフィンは外がかつての自分の棲家だと気付いたようでした。
すると彼はそのままケージの奥へ行き外に背を向けました。
スタッドマフィンは一歩も外に出ようとはしませんでした。

私たちはスタッドマフィンと一緒に自宅へ戻りました

スタッドマフィンは広いガレージで数匹の子猫たちと一日中走り回って遊び一緒に暮らしています。
それぞれに自分のケージを持ち、ガラス窓から外を眺めることもできます。
スタッドマフィンは子猫たちと同じ大きなお皿から分かち合って食べることをすでに身に着けています。
スタッドマフィンが人間に完全に心を開くにはまだ時間が必要です。
しかしきっとその日が来ると私たちは確信を持っています。

嬉しいことにスタッドマフィンを家族に迎えることに興味を持つ人と、そのために協力したいという人が現れ、来週スタッドマフィンに会いに来ることになりました。

彼の新しい人生が愛情に満ちた時間であるように、私たちは心から願っています。