その夜、私は猫のコロニーを探して自宅から10分ほど離れた場所を通りかかりました。
男性が路上で猫に食べものをあげていました。
猫はやせ細り私が見たこともないほど汚れていました。
聞くと、男性は近所に住んでいて痩せた野良猫を心配して食べ物をあげていると言います。

野良猫は撫でると助けてほしいというように鳴きました。
すぐにでも人間の助けが必要なのは明らかでした。
私はキャリーケースを取りに走りました。

猫の鼻先に開けた缶をかざしてキャリーケースに誘導すると、野良猫は素直に中へ入っていきました。

連れ帰った猫は長い間、食べることも飲むことも満足にできなかったようです。
恐らく体格のいい猫だったはずですが、飢餓と脱水から殆どの筋肉も失い骨と皮だけに痩せていました。
汚れた身体は被毛が厚く固まってしまっていました。
頭に比較的新しい戦闘痕があり、耳は以前のケガが感染症を起こしたらしくカリフラワーのように変形していました。

野良猫はトイレを使うことができましたが、トイレの外にも排尿しました。
去勢されていない野良猫が新しい環境でマーキングをしているのか、それとも病気を抱えているのかその時点では分かりませんでした。

私たちは野良猫をテディと呼びました。
動物病院で診察を受けたテディは恐らく生後4~5歳と言われましたが、私たちにはもっと高齢に見えていました。
血液検査の結果貧血状態であることが分かりました。
テディは赤血球が不足し全身に十分な酸素を送ることができないため、常に倦怠感に襲われていたのです。

猫は長期間飢えて体力を失うと腎不全を起こしやすい傾向があります
テディは腎臓の精密検査を受ける必要がありました。
その後の検査でテディは腎機能の低下が認められ、尿路感染症があることが分かりました。
感染症の原因を探るため、さらに詳しい検査を受けたテディは皮下輸液と注射を打ち28日分の抗生物質を処方されました。
獣医師は経過を観察するため週1回の検査に通うように言いました。

テディは家に連れて帰ったとき十分な食事と水を飲み、私たちに撫でられると喉を鳴らしました。

私たちは一息ついたテディをきれいにしなければなりませんでした。
テディは身づくろいをしません。
私はテディをしっかりブラッシングした後にお風呂に入れました。
バスタブを黒く汚れたお湯が流れていきました。
テディは4回シャンプーをしなければなりませんでした。

去勢されていないオス猫はマーキングをするために通常よりも多く皮脂を分泌します。
その皮脂はテディが身づくろいを始めるか私たちが入浴させるまで彼の皮膚に残ります。
テディは身づくろいを始めるかもしれませんが、それまでは私たちがきれいに保つ必要があります。

お風呂では大きな鳴き声を上げていたテディでしたが抵抗することもなく、固いマットのような毛がなくなって私たちの膝で体を伸ばして寛ぐようになりました。

テディは治療を始めて2週間後には徐々に赤血球を増やし始めました。
彼は処方された薬にいい反応を見せているようです。
テディの体重はなかなか増えませんが彼は安定した食欲を保っていました。
食欲が安定しているのはとてもいい傾向です。

テディの被毛はモジャモジャで油っぽいままだったので、ずっと私たちはブラッシングが欠かせませんでした。
ところがある日、朝食後のテディが軽い身づくろいをしているのに気付きました。
いい傾向です。私たちはそれが続くことを願いました。

テディを連れ帰り24時間体制の看護を始めたとき、彼は全身に戦闘痕を背負い、過酷な暮らしの中で蝕まれた身体で苦しんでいました。
私たちの活動は手当てと避妊手術をした野良猫たちを元の棲家に返すことを基本にしています。

テディと出会ったとき、私は違うことを考えました。
健康を取り戻したテディに今度こそ愛情を注いでくれる家族を見つけたいと強く思いました。
私たちと抱き合い至福の表情を見せるテディには彼に愛情を注いでくれる家族が必要です。

治療を続けているテディはゆっくりと回復しています。
少しずつ体重を増やしているテディの身体にはエネルギーが蓄えられてきました。
テディは妻の足の上に寝そべりブラッシングをすると大きく尻尾を振ります。
抱き上げると胸に顔をうずめています。

私はテディが家族の腕の中で至福の表情を浮かべるのを想像して今からワクワクしています。