猫は街の人が路地で見かける野良猫でした。
厳しい冬の寒さに耐えている猫を気にかけ、ご飯をごちそうする人もいましたが、残念ながら猫を家に招き入れてくれる人はいませんでした。

地元の動物保護施設チャートン・オルフェリン・モントリアルが保護した猫は、ここでバーニーと名付けられ獣医師の診察を受けました。

バーニーは感染症のために目と鼻が炎症を起こしていました。
鼻は完全に詰まってしまい、呼吸がうまくできずにとても苦しそうでした。
数本の歯を失い、ぐらついて抜けそうな歯も見つかりました。
お腹には寄生虫が見つかり、耳にもダニが寄生しています。
さらに彼の右耳は一度凍り付いてしまい、閉じた状態になっていました。

彼の身体からは無数の傷跡が見つかり、首にはまだ瘡蓋の残った傷が見つかりました。

6歳になるバーニーがいかに過酷な暮らしをしてきたか、彼の身体がすべてを語っていました。

バーニーの健康状態に加え、施設のスタッフたちが最も心を痛めたのは、保護されて以来一度もバーニーから安らいだ表情を見ることができなかったことでした。
温かく飢える心配のない施設の中でスタッフの注目を集めるバーニーは、目を伏せ、傷ついた表情のままでした。

バーニーには時間が必要・・・スタッフたちは彼を待つことにしました。

バーニーには大きな問題がもうひとつありました。
血液検査の結果、彼は猫免疫不全ウィルス感染症(FIV)に陽性反応を示していました。
バーニーの治療は長期化が予想されたのです。

バーニーにはいくつかの手術が必要でしたが、呼吸が苦しそうな間は麻酔を使うことができないため、患部の殺菌と抗生物質の投与による感染症の治療からスタートしました。
スタッフはバーニーの感染症が肺炎を引き起こさないように細心の注意を払い、常に彼を見守っていました。

施設に来て数日、バーニーは治療を受ける際に決して反抗的な態度をとることはありませんでした。
抗生物質を投与され、少しずつ回復の兆しを見せ始めた彼は、私たちスタッフがバーニーのためにお世話をしていることにようやく気付き始めていました。

この頃になると、お世話のために近付くスタッフに撫でてもらおうと頭突きをするようになっていました。
バーニーの変化をスタッフたちはとても喜びました。

バーニーは大きく膨らんで見える頬を持っていますが、それはテストステロン・チークと呼ばれ、男性ホルモンの一種テストステロンの影響を受けているためでした。
これは人にも見られる現象で、闘争心の強いタイプの人に顔幅の広い人が多いのはテストステロンの影響だと言われています。

バーニーは去勢しておらず、彼の身体はしっかりとした筋肉質です。
野生の暮らしを生き抜くためにバーニーは近所のボス猫で居続けるしかありませんでした。
彼の顔はバーニーが戦い続けてきた証なのです。

施設に来て10日ほど経つと、バーニーの目の炎症がおさまり、大きな顔に浮かぶ彼の表情から悲しみや苦痛は見られなくなりました。
かわりにバーニーは子猫のような甘いまなざしを送ってくれるようになったのです。

鼻水もほとんど止まり、呼吸も安定してきています。
もうすぐ抗生物質の投与の必要が無くなるでしょう。

バーニーの回復を待ち、彼の本格的な治療が始まります。

スタッフが近付くと彼は柔らかい笑顔を向けてくれます。
厳しい野生を生きていたとは思えない、穏やかで優しい目をしています。
とても社交的になったバーニーですが、それでもいまだに物音には敏感に反応しています。

スタッフ達は、バーニーが健康を取り戻し心から穏やかに過ごせる日々が訪れることを願い、彼のお世話を続けています。