新しいダンボール箱の中には厚手の布きれと水、そしてチーズバーガーの残りが置いてありました。
私の職場は工場なので、箱や布切れが調達できます。
しかし、子猫がどこから来たのか、誰が寝床を用意してあげたのか分かりませんでした。
とても人懐っこい子猫ですが、痩せて小さく首輪はありません。
子猫は顔を擦りつけながら、ときどき私を見上げます。
子猫に気に入られたのが伝わってきて、私は放っておけなくなってしまいました。

子猫を家へ連れて帰ると決めたのですが、仕事が終わるまで子猫を待たせる適当な場所がどうしても思いつきませんでした。
私は上司に大事な用時があると言って早退を申し出ました。

家へ向かう前に動物病院へ行き診察を受けることにしました。

子猫は生後10週のメス、マイクロチップは見つからずやや低体重でしたが幸い健康面に問題はありませんでした。
血液検査でFeLV(猫白血病ウィルス感染症)とFIV(猫免疫不全ウィルス感染症)は陰性、予防接種を済ませ避妊手術の予約をしました

家に着くと、子猫が最初にしたことのひとつは帰る途中で購入した爪とぎを思い切り引っ掻いたことでした。
購入しておいて本当にラッキーでした。
そして子猫はずっと私の後を付いてまわりました。
私がベッドに横になるとぴったりと寄り添って遅い昼寝を始めました。
どうやら私の家も気に入ってくれたようです。

私はゴーストという名前の犬と暮らしてきました。
ゴーストの名前は『Game of Thrones(氷と炎の歌)』のキャラクターから付けたのですが、子猫も好きなキャラクターのアリアの名前で呼ぶことにしました。

ゴーストにアリアを紹介すると、挨拶代わりに近付いたゴーストの鼻先をアリアのパンチがかすめました。
アリアはゴーストをなかなか近付けませんでしたが、その後ゴーストの優しさに気付いて一緒に昼寝をする仲になりました。

アリアのために購入したベッドは、彼女のお気に入りになりました。
もうひとつのお気に入りは私の頭をベッドにすることでした。

アリアはとてもおしゃべりだし、私が腰を下ろすと私の顔に彼女の顔を擦りつけて喉をゴロゴロと鳴らしました。
彼女は毎日私にたくさんの頭突きとスリスリをして『とっても幸せよ』と言っているようでした。

1年後立派に成長したアリアは平均より小柄ですが、健康で幸せです。
アリアの大きな瞳はとても魅力的で、彼女に見詰められると私は逆うことができません。
アリアは今でも私の膝をひとり占めしています。

上司に大事な用があると言ったとき、決してうそを言ったわけではありません。
私はあの時新しい家族を迎えていました。

アリアは私とゴーストの愛情を一身に受け、私たちとの暮らしに満足しているようです。
アリアが私を選んでくれたことも、私が早退したことも間違いはありませんでした。