私と夫が運営する保護施設はここで新しい家族を探す健常な猫と、病気やケガ、障害そして高齢のために新しい家族との出会いが難しい猫たちが居て、彼らには生涯の家を提供する活動をしています。

猫の20歳は人間で96歳にあたります。
彼にどれだけの時間が残されているのかは分かりません。
でも、私たちは彼の命を諦めることはできませんでした。

猫にはオズワルドと名前が付けられていました。
オズワルドは痩せていて全体的に健康状態が思わしくありませんでした。
さらに聴力にも衰えがあり、後ろ足がうまく動かず歩くのにとても苦労していました。

ところが施設に着いたオズワルドは動かない足を一生懸命動かして探検を始めたのです。
おやおや、あなたは周囲を欺いていたの?
オズワルドはよほど自分の家が嬉しかったのでしょう。
歩くことを止めませんでした。

私は汚れていたオズワルドをお風呂に入れてあげました。
猫はお風呂が苦手な子が多いのですが、オズワルドはずっとおとなしくしていました。
そして、私がお皿に入れたキャットフードを残さず全部たいらげました。

あなたを迎えに行ったのは間違いなかったでしょう。
あなたの飼い主が諦めてしまったのはとても残念だけど、私たちは諦めるなんてできなかったのよ。

私たちは今までに何十匹と言う18歳以上のスーパーシニア猫を受け入れてきました。
彼らは十分なお世話を受けられず、栄養不足で健康状態が悪いことが多いものです。
そのため私たちは施設に着いた彼らに必要なお世話をするように努力します。
しかし、スーパーシニアの猫たちは、どんなにケアをしても、際立った改善が見られないのも事実です。
オズワルトの場合も、だんだんと弱っていく足が大きく改善することはないと分かっていましたし、私はそう思っていました。
だから、一生懸命に歩くオズワルドの姿を見たとき、うそでしょ?そう思いました。
驚いたし、とても嬉しかったのです。

20歳を過ぎた猫は健康状態が信じられないほど急速に悪化し、私たちと過ごせる時間が短くなる可能性があることも分かっています。
でも。
私たちがオズワルトにやれることはまだあります。

私たちと暮らし始め1週間が経った頃のオズワルトを見ればそれがよく分かります。
彼は私の後を付いてまわりました。
私はわざとキッチンテーブルの周りをグルグルと歩き回りました。するとオズワルトは一度も倒れることなくテーブルの周りを私の後ろについて歩き続けたのです。
私はオズワルトを誇らしく思いました。

私たちとの暮らしも2週間が経とうとしていました。
オズワルドは私が朝食をとっていると傍にやって来て鳴きました。
『私にもくれないかな』そう言っているのです。

オズワルドの後ろ足は調子のいい日と悪い日がありました。
調子の悪い日はほとんど横になって過ごしていましたが、おやつは歩ける日もじっとしている日も同じくらいに食べました。
小袋に入ったおやつを1日4つもたいらげていたのです。
オズワルドの食欲はとても旺盛でした。

ほんの数日後、オズワルドの足が思うように動かなくなっていました。
私はオズワルドが活発な猫たちを気にしないで済むように個室で過ごしてもらうことにしました。
ところが11歳のエルメスがオズワルドと仲良くなりたかったようで、オズワルドの部屋に押しかけてきてしまいました。
オズワルドはほかの猫が入ってきても気にすることはありませんでした。
彼らはお互いに気を使うことなく部屋をシェアしました。
オズワルドは自分の足が動かないことをちゃんと受け止めていたのです。

オズワルドが来て1か月、その日は足の調子がそれほどいい日ではありませんでした。
私がキッチンでチキンを茹でていると、オズワルドが匂いを嗅ぎつけてやってきました。
わたしが持って行く迄待てなかったようです。
ゆであがるまでそこで私を見ていました。

その後、少しずつオズワルドは坐っている時間が増えていきました。
私がお風呂に入れてあげると、彼は気持ちよさそうに喉をゴロゴロと鳴らしました。
お風呂にもすっかり慣れてしまいました。

2016年8月25日。
オズワルドは私たちに見守られて虹の橋を渡りました。

私は心の芯まで哀しみに染まっていました。

私たちはたくさんのスーパーシニアの猫たちを見送ってきましたが、これは誰かがしなければならない仕事です。

オズワルドを引き取ったとき、彼と過ごせる時間がこんなに短いとは思いませんでしたが、必ず最高の時間が過ごせると思っていました。
オズワルドはここに来て私たちと一緒にいることを喜んでくれたし、私は彼との時間が大好きでした。
もっと一緒にいたかったけれど、とても淋しいけれど、一緒に居られたことを私はきっと忘れないわ。