以前の家主は老夫婦だったと聞いていました。
彼らが残したメモにはこう書いてありました。

『愛する家にようこそ!
私たちと同じくらいこの家での暮らしを楽しんで下さい。
ひとつだけお願いがあります。
あなたは無理にする必要はありませんが、もし引き受けてくれたら私たちはとても感謝します。
裏庭に年を取ったオレンジ色の野良猫が住んでいます。
彼は12年前に裏庭で生まれました。
彼は傷を負った足を持っていて人を近付けません。
彼は数年前から1日2回、水とウェットフードをポーチで食べています。
私たちは冬の寒さと雨から彼を守るために小さな家を置いています。
私たちは彼を残したくありませんでした。』

前の家主の老夫婦は、その猫のことをどうしても放っておけなかったようです。
そして私たちに残していかざるを得なかった野良猫のお世話を引き継いでくれないかというのです。

何だかワクワクする話じゃありませんか?

早速私と友人は裏庭の猫が現れるのを待つことにしました。
するとメモを読んで間もなくそれらしき猫が現れたのです。

オレンジの猫は裏庭へ続く玄関の外に現れて家の中をじっと見詰めっていました。
私たちに気付いた彼に怯えた様子はありませんでした。

私たちは扉越しに私たちの猫に彼を紹介しました。
彼は私たちの猫にも怯えた様子もなく、穏やかな反応でした。

私たちは老夫婦と同じように、彼にウェットフードとお水を置きました。
それ以来、オレンジの猫は1日2回、家の裏口にやってくるようになりました。
ご飯を食べに現れる彼は、扉越しに私たちや猫の声を聴くことができます。
私たちの声がしても彼は立ち去ることはありませんでした。
私と友人は彼にラズム・ダーと名前を付けラズと呼ぶことにしました。

私はラズが現れる場所に、マタタビを置いてみました。
現れたラズはゴロゴロと転がって楽しんでいました。

ラズはお腹が空くと戸口に現れ、私たちや猫たちの視線の中でご飯を食べました。
私たちが庭に出ても走り去ることはありませんでした。
私たちはラズに犬のNyxを紹介しました。

私はラズが現れた頃から、彼とのいきさつをSNSに投稿しました。
するとメディアが反応し、それを見た人たちから私たちを応援するたくさんのメッセージをもらいました。
中にはラズとの距離を縮めるためのアイデアやアドバイスをくれる人もいました。
いまやラズはたくさんの人に見守られています。

私たちの5匹の猫はそのうちの4匹が野良猫でした。
私は老夫婦のメモを読んだとき、彼らがラズを引き寄せたのではないかと思いました。

初対面のラズと猫たちは本当に穏やかな出会いをしました。
私たちの猫がいることでラズはどこか安心しているのかもしれません。

最近のラズはお腹が空くと彼の方から戸口にやって来て知らせるようになりました。

私はラズにいわゆる野良猫の雰囲気を感じることができません。
だから、時間はかかるかもしれませんがもっと距離を縮めることができると思っています。

少なくとも老夫婦の願いを引き継いでいくことに間違いありません。