イザベラさんは猫を保護しCOM(Chatons Orphelins Montréal)でお世話ができないかと連絡をくれました。
私たちは『YES』とこたえ猫を保護することにしました。

彼女の投稿を見た人の中に協力者が現れ、スタッフは猫が現れるという場所にキャットフードを入れたキャリーケースを置いて猫を待ちました。
姿を現した猫は食べ物を求めてキャリーケースに入っていくと、逃げるチャンスがあったにもかかわらずそこにとどまったのです。
スタッフはキャリーケースの扉を閉じて動物病院へ向かいました。

獣医師の診察を受けた猫は7歳のオスでした。
猫はノミに覆われ、両耳は凍傷のためにもげ落ち、中耳の中にもノミが寄生して感染症を起こしていました。
顎には新しい傷があり、首から背中にかけて無数の戦闘痕が見つかりました。
歯の数本は抜け落ち、治療の必要な歯と歯肉炎のために痛みを抱えていました。
そして血液検査の結果、糖尿病の罹患とFIV(猫免疫不全ウィルス感染症)に陽性であることが分かりました。

過酷な暮らしは猫の体を蝕み、猫はたとえ食べ物があったとしてもかめない状態で生きていました。
猫は生きていられたのが不思議だという状態だったのです。

イザベラさんの投稿を見た人から猫の情報がいくつか寄せられました。
猫はイザベラさんが暮らす地域にある猫のコロニーに数年前から姿を見せ、1匹で生きていたようです。
猫の存在は知られていましたが、残念ながら救いの手を差し伸べる人はいなかったようです。

猫はハンシックと名付けられ、早速治療が始められました。
ハンシックは、感染症と糖尿病の投薬が始まり歯科手術を受けることができました。
彼はようやく痛みから解放され、食べ物を咬むことができるようになりました。

施設に来た当時、ハンシックは痛み、不快感、そして恐れのために物陰に隠れて周囲に怯えていました。
しかし回復に向かい始めると、隠れることを止めてスタッフ達と少しずつおしゃべりを始めふれあうようになりました。
スタッフ達はハンシックの変化をとても喜んでいました。

ハンシックは物音に敏感に反応し、彼が落ち着いて過ごすには静かな環境が必要でした。
私たちはハンシックを里親さんの自宅へ移し、ゆっくりと過ごせる環境を整えることにしました。

里親さんに愛情を注がれたハンシックは、心が柔らかくなっていくごとに、そのまなざしは少しずつ明るさを増していくようでした。

ハンシックはFIVに感染しているため、回復に3か月という長い時間が必要でした。
ハンシックはその間にゆっくりと心を開き、里親さんの膝で寛ぐようになりました。
里親さんの後を付いてまわり、何をしているのか観察するようになりました。
そして夜寝るとき、ハンシックはベッドの上で里親さんに抱かれて眠るようになったのです。
里親さんとの暮らしの中で、ハンシックは人間への信頼を学ぶことができました。

ハンシックは健康を手に入れ家族を探す時期を迎えました。
ハンシックはFIVと糖尿病に注意が必要ですが、それ以外何も問題はありません。
私たちは静かで落ち着いた環境を好むハンシックに、彼を理解して彼だけに愛情を注いでくれる家族を探そうと考えました。

私たちと出会ったとき、希望を失ったように暗く沈んでいたハンシックのまなざしは健康を取り戻した今穏やかに輝いています。
イザベラさんに差し伸べられた救いの手が、彼の人生を変えてくれました。
コロニーの中で孤独に生きていたハンシックは人間との暮らしの中で人間を信頼することを学び愛情のぬくもりを知りました。
ハンシックは人間の傍にいるのが大好きな愛情深い猫です。
ハンシックは寄り添って過ごしてくれるあたたかい家族との出会い楽しみにしています。