5歳の野良猫にはスティービー・ワンダーと名前が付けられました。スティービーは、それまで暮らしていた外と全く勝手の違う施設の環境になかなかなじめないようでした。
特に人の気配を警戒して1日の殆どを身を潜めて過ごし、スタッフが用意する食事にも滅多に手を付けようとはしなかったのです。

スタッフはスティービーを数匹の猫が一緒に暮らしているエリアに移してみました。
するとスティービーの状況は少し良くなりました。
人を警戒するのは変わりませんが、猫たちに囲まれたことで食事を摂るようになったのです。

1か月が経過しても、頑なに人を警戒し続けるスティービー。

2か月が過ぎようとしたとき、施設のボランティアのひとり19歳のプライスがスティービーの力になりたいと言ってきたのです。
プライスはスティービーに本を読んであげるのだと言いました。
プライスは盲目のスティービーに自分の声を聴かせ、一緒に時間を過ごすことで人間が敵ではないと感じてもらえるのでは・・・そう考えたのです。

私たちはプライスの試みを見守ることにしました。
プライスは早速、スティービーのために毎日施設に通うようになったのです。

彼が選んだ本は『ハリーポッター』でした。

残念ながら、施設にはホグワーツ魔法魔術学校を思わせるものは何もありません。
プライスは集中して本を読みました。

プライスは毎日施設を訪れ、毎回数時間ずつスティービーの前でひたすらハリーポッターを読み続けました。

『初めてスティービーを会ったとき、彼はぼくに全く興味を持っていませんでした。
スティービーがボクに心を許してくれるまで数週間かかりました。』

頑なだったスティービーでしたが、プライスの声は彼に届いていました。
スティービーは次第にプライスの声に耳を傾けるようになり、文字通り、プライスとの距離を縮めて行ったのです。

数週間が経つと、スティービーはプライスの訪問を心待ちにするようになりました。
そしてプライスが座ると、彼にぴったりと寄り添いプライスの声に抱かれるようになりました。

プライスの想いを乗せた声は、スティービーに変化をもたらし、彼はプライス以外の人も受け入れ始めたのです。

そして、施設の中での暮らしぶりにも変化が現れました。
食事を摂る場所もトイレも彼はちゃんと認識しています。
スティービー自身が快適に暮らせるように行動するようになりました。

私はとても不思議に思ったことがありました。
プライスが本を読んでいる間、スティービーは飽きることがありませんでした。
彼はじっと座っていて動こうとしなかったのです。
きっとスティービーはプライスに特別な信頼を置いたのだと思います。
プライスは今でもほぼ毎日、スティービーのために施設に通ってきています。
そして、金曜日にはホグワーツ魔法魔術学校のマントを着てスティービーの前に座っています。
信頼関係を結んだ今も、プライスは決してスティービーとの時間に手を抜くことはありません。

スティービーはプライスに撫でられ、頭にキスすることを許しています。
プライスはスティーブを家族に迎えたいと考え、彼の母親の了解を得ようとしています。
その日が来るまで、彼は毎日通い続けるそうです。

彼はスティービーと過ごした空間を、『正しく忠実で忍耐強く、 苦労を苦労と思わない努力家であること』が入る条件のハッフルパフに変えてしまったようです。
プライスの努力は実を結び、スティービーの人生を救いました。

プライスはこう言っています。『時間はかかったけれどそれだけの価値があります。』