子猫の鳴き声に気付いた女性がキンバリーに助けを求めたのが4日前です。
子猫は庭にある小屋の床から13mの底まで落ちていたのです。
キンバリーは子猫を救出するために、様々な方法を試したようでした。
しかしどれもうまくいかず、その間、子猫はずっと鳴き叫んでいるようでした。

時間が経てばたつほど子猫の身体は衰弱してしまいます。
私と仲間のロレッタはすぐにロサンゼルスを出発し、夜通し車を走らせてノースカロライナへ向かいました。

走行中に5日目のビデオを受信しました。
子猫は鳴いていました。
しかし1本目のビデオに比べて元気がありませんでした。

私たちが到着したとき、現場にはキンバリーと家主のデブラ、さらにコロンビア州からボランティアで駆け付けた配管工事業者のロブとジェームスが居ました。

デブラは子猫が自力で登れないかと長い木の枝を束ねて繋ぎ、排水管に下していました。
ところが引き上げようとした際に頑丈なパイプで枝の束が壊れてしまい、先の方が途中に引っかかっていました。

私たちには13m落ちた子猫がどんなダメージを受けているのか分かりません。
子猫の様子を確認するために枝を取り除き、カメラを下ろしました。

子猫の顔が映し出されました。
キンバリーが子猫の命を繋ぐために入れたキャットフードにまみれていました。
助けを求めて必死に鳴いています。
しかし子猫は疲労と恐怖のために希望を失いかけているように見えました。
キンバリーとデブラが子猫を励ますために猫の鳴き声をまねて呼びかけると、子猫はその声に反応しました。

子猫は頭と四肢を動かすことができるようです。
私たちは子猫の身体にロープの輪をかけて引き上げることにしました。
ロープの輪だけでは子猫の頭をくぐらせることは困難です。
そこでロープをアシストするための柔らかいワイヤーの輪を下ろしました。
映像を頼りに難しい作業が続きました。

時間だけが過ぎて行き、子猫の鳴き声は次第に弱くなりついには鳴き声が消えました。
猛烈な眠気に襲われています。
眠ってしまえば体温が下がってしまいとても危険です。
キンバリーとデブラは必死に子猫に向かって呼びかけました。

そして…子猫が落ちて120時間後、ようやくロープの輪が子猫の身体を捉えました。
私とジェームス、ロブの3人でそこから一気に引き上げなければなりません。
3人の呼吸を合わせ、私の合図で引き上げました。
地中から約1分あまり、ついに子猫を引き上げることに成功しました。

その瞬間、キンバリーとデブラ、ロレッタの3人の女性は半泣きの歓声をあげました。
子猫は何が起きたのか分かりません。
目を丸くして鳴くことも忘れていました。

急がなければなりません。
私たちは車へ走り現場から約30分の動物病院へ急ぎました。
車を走らせると、ロレッタはすぐにヒーターを入れて子猫に温風を当てました。
子猫に低体温症が見られたからです。
温められた子猫は少しずつ動けるようになってきました。

獣医師は丁寧に子猫を診察し、お腹の寄生虫以外目立った異常が無く、子猫がオスだと言いました。
私たちは子猫をジェシーと名付けました。

ジェシーは数日ほとんど動くことができなかったため筋肉の萎縮が心配されましたが、たくましい彼は軽快な動きを見せ、私たちを喜ばせました。
そしてジェシーのFIV(猫免疫不全ウィルス感染症)とFeLV(猫白血病ウィルス感染症)の検査結果は陰性、私たちはホッと胸をなでおろしました。
入院の必要はなく、寄生虫の薬をもらい動物病院を後にしました。

驚くほどたくましかったジェシーはその夜、私たちと一緒にホテルに泊まることができました。
キャットフードにまみれていたジェシーをシンクのお風呂に入れました。
すっかりきれいになったジェシーはロレッタの腕の中でゆっくりと眠りにつきました。
目を覚ましすっかり私たちに心を許したジェシーは、ロブの膝に抱かれて彼を見上げて安心しきった表情を見せていました。

ジェシーの無事を祝う夕食の後、私たちは5年前に地元のボランティアと協力して救った猫のシャギーの家を訪問しました。

ジェシーを救出して3日後、次の仕事のためにロサンゼルスへ戻ろうとしていたとき願ってもない知らせを受け取りました。
シャギーのママ、パティがジェシーを家族に迎えたいというのです。
どうやらパティはシャギーを訪れた際に連れていたジェシーに心を奪われてしまったようです。

私たちはジェシーを彼の新しい家族のもとへ送り届けました。
オモチャに囲まれ、無邪気な表情を見せるジェシーの傍には、彼を見守るパティの温かなまなざしがありました。