モントリオールにある保護施設シャトン・オルフラン・モントリオールに保護された6歳の猫は、そこでバーニーと名付けられ獣医師の診察を受けました。
バーニーの身体は排せつ物の臭いを帯びていて、闘いで残された無数の傷跡が見つかりました。
厳しい寒さのために右耳は凍傷のために塞がった状態でした。
治療の必要な歯が何本か見つかり、お腹には寄生虫が見つかり、ダニも寄生していました。
感染症のために目は涙が止まらず、鼻が完全に詰まっていたため呼吸が苦しそうでした。
さらに、FIV(ネコ免疫不全ウィルス感染症)に陽性反応を示していました。

呼吸が困難な状態だったバーニーは麻酔を使うことができなかったために、手術を受けることができませんでした。
そこで抗生物質や殺菌など投薬を中心とした治療がはじめられました。
治療に一切の抵抗をしなかったバーニーでしたが、傷ついた表情が解けることはありませんでした。
いつも目を伏せ、人の動きや物音に敏感に反応して安全な施設の中にいるにもかかわらず安らいだ様子を一度も見せてくれませんでした。
施設のスタッフ達は、バーニーを待つことにしました。

バーニーの身体はしっかりとした筋肉質で丸く大きな頬が特徴的でした。
バーニーは去勢しておらず、常に闘いの中に身を置き周囲の猫のボスとして生きていました。
そのため、ホルモンの影響を受けて大きな頬を持っていたのです。
大きな頬は全身の傷と同じようにバーニーが過酷な暮らしの中で闘い続けていた証でした。

施設の暮らしに周囲を警戒する必要のないことをバーニーが気付くまで時間が必要だったのですが、治療を受け体調が好転してきたことでバーニーの表情や行動に変化が現れました。

施設で暮らし始めて2週間が過ぎる頃には、バーニーに誰かが近付くと柔らかなまなざしで見上げるようになっていました。
頭を突き出し、撫でるように催促するようになったバーニーにスタッフたちは喜びを隠せませんでした。
とても野良猫のボスとして生きてきたとは思えない柔らかな表情を見せるようになったバーニーに、施設のスタッフ達は瞬く間に心を奪われていきました。

バーニーの状態に合わせて投薬を中心に進められていた治療が実を結んできました。
治療を始めて2か月後には呼吸が安定し麻酔を使えるようになりました。
バーニーは、必要な手術を受けることができたのです。
施設はバーニーの完全な回復を待って新しい家族を探す準備を始めるために、マチルドさんとパトリシアさんがバーニーの里親さんをお願いすることにしました。

施設のスタッフ達に甘えるようになっても物音には敏感だったバーニーでしたが、里親さんと暮らし始めると僅か数週間でその暮らしに完全に適応していきました。
バーニーは里親さんとの暮らしで警戒するよりも、楽しむことを優先するようになりました。
バーニーへの注目と愛情を素直に求めるようになり、お腹を撫でるようにおねだりするようになりました。
そして、里親さんの家に訪れる人を玄関で歓迎するようになったのです。

施設のセリーヌさんが里親さんの家を訪れると、バーニーはしっかりとセリーヌさんを認識していると感じられたそうです。
バーニーはセリーヌさんの手に頭を押しつけて撫でるように催促したのだそうです。
セリーヌさんは長く野良猫として生きていたバーニーが愛情を注がれ、完全な家猫としてそれを楽しんでいることが嬉しくて仕方ありませんでした。

6月のはじめ、バーニーは永遠の家に旅立って行きました。
バーニーを家族に迎えた人はバーニーの人生に責任を持って向き合ってくれる頼もしい人物だったそうです。

施設のFacebookには新たな人生を歩み始めたバーニーの表情が投稿されていました。
バーニーは今、新しい家族の後を付いてまわるのがお気に入りのようです。