ペンシルバニア動物虐待防止協会に連れてこられた猫はゾロと呼ばれていました。
とても人間に慣れていたゾロでしたが、施設に来た頃の彼はなぜかスタッフに触れさせようとしませんでした。
しかし間もなく、ゾロに血尿が見つかり獣医師の診察を受けてその理由が明らかになったのです。

獣医師の診断は膀胱結石でした。
施設の医療チームはすぐにゾロの手術を行いました。

ゾロのお世話をしていた女性は、彼に一番必要なのは彼を愛してくれる家族なのに、自分はどうしても見つけることができなかったと話していました。
そんなゾロは病気で痛みと不快感を抱えていたためにスタッフから触れられることを拒んでいたのだと獣医師は説明してくれました。

手術を終えたゾロは回復室で療養を始めました。
すると。
ゾロと出会ったスタッフたちは全員、ゾロが特別な猫であることを感じることになったのです。

ゾロは会う人すべてにハグしてもらい、決して自分から離れようとしなかったのです。
ゾロのお世話をするスタッフたちはすぐにタキシードのゾロに心を奪われていきました。

ゾロのケージを掃除するスタッフは、そのたびにゾロに抱きつかれなかなか放してもらえなかったそうです。
時にはゾロにキスまでしてもらったと笑っていました。

獣医師や看護師たちもゾロの状態をチェックしに行くと長時間彼とハグし合って過ごすことになりました。

さらにゾロと抱き合っていたのはスタッフだけではありませんでした。
施設を訪れる人達がゾロと出会うとゾロはその全員とハグをしていたのです。

デスクワークをする私も同じでした。
私がデスクで書類を作っている間、ゾロは私の腕の中でずっと寄り添ってくれました。
私はゾロの柔らかく滑らかな毛並みと小さな口髭にとても癒されてきました。

術後の経過は良好なゾロでしたが、彼はまだいくつかの膀胱結石があり、食事療法を続ける必要があります。
私たちはゾロの家族を探し始めたときそのプロフィールに食事療法の継続が不可欠であることと、『ゾロはあなたに抱擁を与えることが大好きです。』と書き加えました。

ゾロの家族を募集し始めて1週間余り、マサチューセッツ州に住む女性がゾロを家族に迎えるために施設を訪れました。
初対面の女性に抱かれたゾロは、これから先もずっと彼を抱きしめてくれる腕の中で穏やかな表情を見せていました。
ハグされた人の心を温めていたゾロ。
私たちの心を盗んだゾロは優しい腕に抱かれ、自分の家へ旅立って行きました。