友人がリンクを送ってくれたインスタグラムのプロフィールを見た私は、ジゼルの背負った運命とそれまでの人生にただ涙があふれました。

ジゼルは約1か月前、MSPCA(マサチューセッツ動物虐待防止協会)に元の飼い主によって棄てられていました。
ジゼルは推定2歳にも拘らず体重1kgあまりととても小さく、しかもそこには彼女が抱える先天的なハンディが大きく影響していました。

ジゼルの全ての関節と足は完全に成形されておらず、それは常に彼女に不快感を与え、ときには激しい痛みの原因となります。
またジゼルは胸郭が小さいため普通の大きさの心臓と肺が体の中でねじれています。
そのため緊張やストレスで呼吸が困難になることもあります。
そしてジゼルは彼女のお世話に熱心ではなかった元の飼い主の無関心から視力を失っていたのです。

15歳の愛猫ルチアを亡くし、哀しみの癒えない毎日を送っていた私は、ジゼルのことが頭から離れませんでした。
でも、多くのハンディを抱えるジゼルを家族に迎えることを簡単には決断できませんでした。
果たして私にジゼルのママが務まるだろうか・・・
何日も眠れない夜を過ごした後、ジゼルのお世話に携わった何人かの人に話を聞きました。
ようやく決心の着いた私は、ボストンのMSPCAに申請書を提出しました。

SNSを通じて広まり、メディアにも取り上げられていたジゼルにはすでに数百人の引き取り希望者が集まっていました。
幸運なことに、一緒に暮らしてきた猫たちとの経験が認められ、最終的に私が選ばれたのです。

ジゼルと初めて会った時、突然彼女に異変が起こりました。
里親さんと私は動物救急へ急ぎました。
呼吸が苦しそうなジゼルは酸素マスクを装着されると、小さな顔をマスクの奥の奥まで入れて呼吸をし、やっと楽そうな様子を見せていました。

私にとって覚悟を試されるような出来事でした。
ジゼルにとって緊張がどれだけ大きな影響を及ぼすかを実感しました。
会って早々のアクシデントに、里親さんは私の決心が変わらないことをとても喜んでくれました。

里親さんはジゼルに深い愛情を注いでいました。
ジゼルを診てきた獣医師の中には、ジゼルはあまり長くは生きられないと言った人もいたそうです。
そこにジゼルがいるのは里親さんの献身的なお世話があったからだと思いました。
私は里親さんに感謝し、改めて全力を尽くそうと誓いました。

覚悟はしていたものの、実際のジゼルとの暮らしを導くマニュアルはありません。
まず、私への信頼を得なければなりませんでした。
私は自宅で事務所として使っている部屋を一時的にジゼルとふたりだけで過ごす専用の部屋にし、一日の殆どをジゼルと一緒に過ごしその部屋で眠りました。
私はジゼルの反応や体調の変化を注意深く観察しました。
ジゼルは何度か気分のすぐれないことがありましたが、それを乗り越えていくたびに徐々に私に心を開いてくれるのが分かりました。

生活スペースで暮らし始めたジゼルを私の猫たちはいたわりを持って迎えました。
ジゼルよりかなり年上の猫たちは、ジゼルが気分の悪いとき近くに寄り添って一晩中見守るようになりました。
ジゼルの毛繕いをし、彼女の様子を気遣っているのが分かります。
ジゼルが加わったことで、私の猫たちの誇らしい一面が鮮やかに引き出されました。

体調のいいジゼルはジャックを家中追いかけるのが大好きになりました。
高齢のジャックはジゼルがちゃんとついてきているか確かめながらリードします。
ジャックを追うジゼルはとても盲目とは思えないスピードで駆け抜けて行きます。
優しいジャックも、嬉しそうにジャックを追いかけるジゼルもまるでドッグランを走る犬のようです。
私は見ているだけで幸せになりました。

私と暮らし始めて1週間ほど経った頃、ジゼルの直腸に命に関わる異常が見つかりました。
小さな体のジゼルのお腹には長すぎる直腸があったのです。
異常が見つかった翌週、ジゼルは直腸の約70%を取り除く手術を受けなければなりませんでした。

無事に手術を終え、自宅に戻ったジゼルを待っていたのは猫たちでした。
中でもジャックは、ジゼルが入院のためにいなくなると心配で落ち着かない様子を見せていました。
ジャックは退院してきたジゼルが自分を追いかけることができるようになるまで、近くに寄り添って励まし続けていました。

ジゼルを迎えて1年が経ちました。
体重は少し増え、1.5kgほどになりました。
直腸の手術の後にもジゼルは痛みや様々な症状でたびたび病院へ足を運びました。
でも、元気なときは家中を走り回り、私の膝を温め、以前より少しだけ体調が安定してきています。

ジゼルの背負った運命は人生の始まりから辛く苦しいものでしたが、彼女は運命に屈することはありません。
ジゼルは精一杯人生を楽しもうとしています。
そして、彼女の傍にはジゼルの重い運命を分かち合う私や猫たちが寄り添っています。

ジゼルが走る姿を俊敏で可愛らしいウサギのようだと言ってくれる人がいます。
私にはジゼルが小さなお芋のように見えます。
彼女はこの家にしっかりと根をはり、私たち家族に多くの実りをもたらしてくれました。
私はジゼルの人生に関わり、家族に迎えられたことを心から感謝しています。