灰色の子は子猫の中で一番身体が小さく、母猫とも他の子猫とも違ってほとんど毛が生えていませんでした。

成長するにつれて母猫にそっくりな兄弟姉妹との違いはますますはっきりとし始め、毛のない子猫は大きな目と耳、しっぽはまるでネズミのようです。
毛は生えてきたものの顎には毛が無く灰色をしていました。
細い足に細長い手足が際立ちました。

数週間が過ぎ一家の引き取り手を探し始めると兄弟姉妹が次々に引き取られていきました。

しかし、毛のない子猫だけは『醜すぎる』『キモイ』と言われてしまい引き取る人は現れませんでした。
同僚は子猫をシェルターへ連れて行くことを考えていました。

私たちの住む地域は野良猫の数が多く、多くの人は猫をペットとみなしていません。
私はもしシェルターへ連れて行ったら、確実に安楽死のリストに挙げられると思いました。
私はすでに2匹の猫と暮らしていましたが、同僚を手伝ってお世話をしているうちにその子猫のことがだんだん愛おしく思えていました。
私はその子猫を家族に迎えることを決心しました。

私は子猫にポッサムと名前を付けました。
一番小さく生まれていたポッサムは動物病院で診察を受けると、体重は約2.4kg、それでも私と初めて出会った頃に比べれば約2倍に増やしていたのです。
健康状態に特に問題は無く予防接種を済ませました。

獣医師に1匹だけ外見が違う理由を聞いてみると、ライコイの劣性遺伝の可能性もあるがはっきりとは分からないと言っていました。

ポッサムを一言でいえば、元気、愛、温かい・・・これにつきます。
ポッサムは窓の外に虫を見るのが大好きです。
でも、遊ぶ以外は私たち家族と抱き合うのが大好きで、シャープな印象とは違い、とても穏やかな性格でした。

先住の猫たちは最初のうちこそ意地悪をしていましたが、時間が経つにつれポッサムを可愛がるようになりました。

冬になると、私はポッサムのためにセーターを用意しました。
ほかの2匹に比べて被毛の少ない彼女はとても寒そうに見えてしまいました。

ポッサムはその外見が話題になり、『醜い子猫が家族に迎え入れられた』とメディアで紹介されることもありました。

しかし、時間が経つにつれて、『素晴らしい猫』と紹介する記事に変わっていきました。
ポッサムを取材した人はみんな彼女の愛情深さや私たち家族との間に築かれた絆になにかを感じてくれたのです。

私が足にケガをして動けなかったとき、ポッサムはずっと私に寄り添い、大きな目で私を見詰め慰めてくれました。

ケガをしたときだけでなく、私が落ち込んでしまった時はポッサムの深くて優しいまなざしは幾度となく私を引き上げてくれました。

いつしか私たち家族の中で、ポッサムはなくてはならない存在になっていったのです。

2017年11月。
夕食をとっていた私たちは、ポッサムの叫び声を聞くまで彼女が遊んでいると思っていました。
駆けつけると、ご飯のお皿の前で横たわっているポッサムがいました。
何の前触れもなかったことから、致命的な発作が彼女を襲ったのだろうと推測されました。

彼女を失った悲しみが家族から消えるまでには時間が必要でした。
でも、生き生きと、愛情にあふれていたポッサムはきっと今も私たちを見守いると思えます。
ポッサムと過ごした時間は決して長くはなかったけれど、数えきれない思い出を残してくれました。
今も、時折、ポッサムが私に寄り添ってくれています。