高速道路から少し離れたアスファルトの端に子猫がじっとしていました。
私は一つ先の通りで方向転換し、どうか車に轢かれないでいて・・・そう祈りながら子猫を見付けた場所へ戻りました。
子猫はまだそこにいました。
子猫の後ろに少し距離を置いてゆっくりと車を停めました。
車を降りて子猫を掬い上げたのですが、子猫は抵抗すらできませんでした。

助手席に子猫を乗せてよく見ると、ほとんど骨と皮に痩せた全身は汚れ、顔まで何かが乾燥してこびりついていました。

座席にあったTシャツをかけてあげると、何か奇妙な音が聞こえます。
動物病院へ連れて行こうと車を出したのですが、奇妙な音が子猫の鳴き声だと気付きました。

動物病院で診察をはじめた子猫は、体重が450g(1ポンド)にも足りませんでした。
獣医師は子猫の顎が2か所骨折し、折れた一部は口の中の奥で突き出てしまっていると言います。
感染症を起こした傷から見て、かなりの間、食べることができなかっただろうと言いました。
そして、おれた顎の骨の治療について頭を抱えてしまいました。

私の国には十分な医療物資が整っていません。
ましてやペット用のものはなおさらです。
獣医師は手術をするにも、小さな子猫に使える器具がないと言いました。

子猫の成長を待って手術をするとしたら、いま私たちに何ができるかと尋ねました。

自宅に連れて帰り、私は子猫にスメアゴルとなまえをつけました。
彼の身体を覆っていたのは、炎症を起こした傷口から出た膿だったのです。
私はスメアゴルをお風呂に入れ、柔らかい離乳食をあげて処方された抗生物質を与えました。

空腹がおさまり、さっぱりしたスメアゴルは澄んだ大きな目で私をじっと見上げ嬉しそうに奇妙な声でおしゃべりしました。

スメアゴルの傷口は一進一退を何度も繰り返しました。

はじめは傷口の炎症がおさまりかけ、順調に体重を増やしていたのですが、しばらくすると再び炎症が悪化し、強い抗生物質を使わなければなりませんでした。
スメアゴルはひどい下痢を繰り返し、増やした体重をそのまま減らしてしまいました。
でも、彼はいつも私に向かって澄んだ目で見上げてくれました。

3週間後、ようやく炎症が落ち着き始め、スメアゴルは少しずつ食欲を増やし、落ちてしまった体重が再び増え始めました。
2月に入ると体重は1kgに迫り、私たちを喜ばせました。

どんなに辛いときも、スメアゴルの目はいつも澄んでいました。
傍に寄り添っている私に嬉しそうに抱きついてきました。

ずっとスメアゴルの治療にあたってくれていたミーア獣医師が、顎の手術が必要かどうかを最終判断するために、アメリカの獣医師のところへ連れて行ってくれることになりました。
そして3月16日、ふたりの獣医師から手術の必要はないと言う診断を受けました。

スメアゴルは完全に口を閉じることはできませんが、噛むことに全く問題は無いと所見されたのです。
スメアゴルの長く辛い戦いもようやく終わりを迎えることになりました。

偶然出会ったスメアゴルは、瀕死の状態から長い戦いを経て未来を勝ち取ることができました。
ずっと見守ってきた私に言えることは、心配で胸がつぶれそうなときも、スメアゴルの明るく澄み切ったまなざしをむけられると私の方が励まれていたということです。

いま、私たちの家族として暮らすスメアゴルは、その明るい澄んだ目で私たちを照らし、みんなから愛されています。