2016年、当時私はルーマニアのコンスタンツァで勤務していました。

ある日、茂みの中から現れた小さな黒猫と出会いました。
とてもフレンドリーなその子猫と少しの間ふれあったのですが、そのときはまだ長い付き合いになるとは思っていませんでした。

その子猫は私を見つけるとどこまでも後を付いてくるようになり、そして毎朝、同じ場所で私を待つようになりました。

私の後をぴったりと付いてくる子猫を見て、同僚たちはまるで私の影のようだと言いました。
私は時間を見つけてはその子猫と一緒の時間を持つようになりました。
私は子猫にセーラムと名前を付けました。

私はひとりぼっちのセーラムを放っておけなくなりました。
そして、当時住んでいた古い兵舎に連れて帰り一緒に暮らし始めまたのです。

忙しい仕事の後にセーラムと過ごす時間は私に自宅を思い出させ、私の心を慰めてくれました。
いつしか、セーラムは私の中でなくてはならない存在になっていました。

セーラムは私の膝の上で昼寝をするのが好きでした。
膝の上が塞がっているときは、私のヘルメットをベッドにしていました。
寝息を立てるセーラムを眺めながら、私はある決心をしました。

ルーマニアの勤務で1か月半が経ったとき、私はセーラムをアメリカへ連れて帰る準備を始めました。
当時ルーマニアは亡命者の問題を抱えていて、セーラムを安全にアメリカへ連れて帰るためには万全の準備が必要だったのです。

私はルーマニアの動物レスキュー隊の中に、セーラムの旅をサポートしてくれるグループを探し始めました。
間もなくオアナさんという保護活動をしている女性と出会うことができました。
オアナさんはOana's Homeless Street Pawsというレスキューグループの創設者で、たくさんの猫を新しい家族へつなぐ活動をしていました。

彼女はセーラムの話を聞き、必要な手続きのために早速行動を起こし、私にアドバイスをくれたのです。
私はセーラムにも動物病院で渡米のための準備をしてもらいました。

セーラムと出会って2か月後、セーラムはオアナさんに連れられテキサス州エルパソの私の自宅へ数千マイルの旅をしたのです。

オアナさんは私とセーラムのために、全てを整え行動してくれました。
私が協力者を探している時も、オアナさんのような親切で熱心なルーマニアの人たちに何度も出会いました。
セーラムの旅はオアナさんをはじめとするルーマニアの人たちが居なければ叶わなかったのです。

テキサスの自宅には私の妻と、以前から一緒に暮らしてきた猫のチェダーがセーラムの到着を待っていました。
セーラムは妻とチェダーとの暮らしにすぐに馴染んでくれたようです。

私が帰国したとき、自宅で待っていたセーラムは瞬時に私だと分かり温かい大歓迎をしてくれました。
そして、ルーマニアにいたときと同じように、セーラムは自宅でも私の後を付いてまわりました。
待ち望んでいた家族との暮らしにセーラムが加わり、私の帰国の喜びは何倍にも膨らみました。

セーラムが私を選んだとき、彼はまさか数千マイルも離れたアメリカで暮らすことになるとは思っていなかったでしょう。
私も赴任先で出会った猫とこんなに深い絆を築くとは想像もできませんでした。
今の幸せがあるのも、私とセーラムのために心を砕いてくれたルーマニアの人々のおかげです。

セーラムは今、テキサスの自宅で王様のように愛されています。