森の奥へと進み、ようやくたどり着いた場所は、意外にも、テントを張るには絶好のキャンプスポットでした。
私たちと同じように、キャンプ場に入れなかった人たちが集まって、すでにテントを張っている人もいました。

早速私とボーイフレンドもテントを張り、夕食後はきれいな星空を堪能しました。

ベッドに寝そべってボーイフレンドと話しているときでした。
離れた所で何かが鳴いているような音がしていました。
はじめは鳥の鳴き声かと思いました。

45分後。
さっきの鳴き声がだんだん私たちのテントに近付いていました。
ちょっと怖くなって先に眠り始めたボーイフレンドを起こしました。

『ボブキャットかしら・・・それとも子供のクーガー?親は一緒じゃないのかしら・・・』
ボーイフレンドは、不安になっている私を安心させようと言いました。
『きっと鳥だよ。怖がることないって・・・せいぜい子猫さ・・・』

ボーイフレンドの言葉にちょっと慰められた私でしたが、鳴き声はどんどん近付いているようでした。

近付いて来る鳴き声は、子猫のようにも聞こえましたが鳥ではありませんでした。

・・・野生の動物に子猫の鳴き声に似ているものがいるかもしれないじゃない・・・
いよいよ不安になった私は、武器になりそうなものを抱いてベッドの中で息を潜めていました。
でも、いつの間にか眠ってしまいました。

それから約1時間後。
また鳴き声で目が覚めました。
鳴き声はテントのすぐそばで聞こえました。
その鳴き声で今度はボーイフレンドも目を覚ましました。

ボーイフレンドは鳴き声の主を確かめるために懐中電灯を掴むと外を照らしました。

ボーイフレンドが抱いて来たのは間違いなく子猫でした。

子猫は招き入れたベッドに素直に入りました。
その夜、私たちは川の字になって眠りました。

次の日、子猫は私たちの傍から離れようとはしませんでした。
辺りに猫の姿はなく、子猫がひとりぼっちでいるのは間違いないようでした。

帰宅の準備を始めた私たちは、当然のように子猫を一緒に連れて帰りました。
子猫の名前は勿論、バーディー(birdy:鳥さん)です。

自宅では、一緒に暮らす猫のボブが私たちの帰りを待っていました。

初めてボブにあったバーディーは、ちょっとナーバスになってボーイフレンドの背中にしがみついてボブの視線から逃れようとしていました。

ボブの方は小さなバーディーを快く受け入れてくれました。
傍にいれば、バーディーだってボブの優しさにきっと気付いてくれるはずです。

こうしてバーディーは私たちの家族に仲間入りしました。

キャンプから帰って数週間後、私たちはバーディーを連れてオレゴン州パシフィックシティーのビーチにでかけました。

バーディーのリードを付けた姿もすっかり板について来ました。
彼女はわたしたちとの暮らしを大方気に入ってくれているようです。

あれから1年半、思っていた通りバーディーとボブは本当の兄妹のようにくっつき合って暮らしています。
バーディーは我が家でプリンセスのような存在になっているのです。

深い森の奥にバーディーがなぜひとりぼっちでいたのか、それは分かりません。

キャンプ場を求めて集まっていた私たちのところへ、鳴きながら現れたバーディーはきっととても淋しかったのでしょう。

バーディーの鳴き声にあんなに怯えていた私はちょっと笑えますが、ずっと鳴き声を気にしていたおかげでバーディーと巡り合えた・・・そう思うことにしています(笑)