その日、ジェシカと私は地元にあるこじんまりとしたペットショップへ立ち寄りました。
そのペットショップは、定期的に譲渡会を開催していて、店に行くと引き取り手を探す猫とふれあうことができるんです。

私たちは並んだケージの中に、1匹の大きなトラ縞の猫を見つけました。

人懐っこそうなその猫が気になってケージから出してもらうと猫はジェシカに抱きついていきました。
その瞬間、私は夢中でジェシカと猫を撮影していました。

猫はジェシカの腕と肩につかまりジェシカの首元に顔を押し付けて必死に彼女に抱きついていました。

ジェシカははじめ少し驚いていましたが、しがみついた猫にどんどん心を奪われていくのが分かりました。

『見て、この子本気よ。一緒に連れて帰ってって言っているわ。』
ジェシカはその猫を連れて帰りたくなっていました。
『名前はクラッチがいいわ。』
名前まで決めてしまっていました。

お店の人に猫のことをたずねると

その猫は他のペットや家族に子供がいるとうまくいかないのでなかなか新しい家族に出会うことができなかったそうです。
その店に2週間、出会いを待っていたのだそうです。

それは、ジェシカにとって残念な情報でした。

私とジェシカは19歳になる猫と暮らしてきました。
かなり高齢の我が家の猫は、常に愛情を必要としています。
さらに私たちには3歳になる息子がいるのです。

クラッチと名付けた猫を本気で連れて帰りたいと思っていたジェシカは、失望して、それでもまだ猫と抱き合っていました。

諦めがついたのか猫をケージへ下そうとすると・・・

猫はなおさら必死にしがみついて離れるのを嫌がっていました。
辛そうなジェシカは涙を浮かべていました。

落胆して自宅へ戻ったジェシカは気持ちを切り替え、クラッチのために手助けをするのだとパソコンに向かっていました。

彼女は地元のFacebookグループに私が撮影したクラッチとかジェシカが抱き合っている動画を投稿したのです。

『クラッチがあの店にいることが分かれば、きっと会いに行ってくれる人がいるはずよ。』
彼女はどうしても、クラッチの手助けをしたかったのです。

数日後、クラッチの様子を見に再びあのペットショップへ出かけました。

すると。

店にはたくさんの人があふれていました。
ジェシカの投稿を見た地元の人たちが、クラッチに会うために集まって来たのです。
お店の人に尋ねると、クラッチを引き取りたいと言う希望者がどんどん増えているのだと言います。

1月24日。
クラッチのいるペットショップからジェシカに嬉しい連絡が入りました。
クラッチの家族が決まりそうだというのです。
希望者の中から一人の女性に絞られたのだそうです。

撮影していた私は、クラッチの必死の想いも、ジェシカの切ない気持ちもカメラを通して痛いほど感じていました。
どんな言葉より彼女たちのハグはたくさんの人にメッセージを届けられると思いました。

ジェシカの投稿は瞬く間に拡散し、世界中の人の心を震わせました。