私は仕事の傍ら野良猫たちの保護活動をしています。
2017年、12月のはじめのことでした。
知人から近所の住人たちにロッコと呼ばれ、ビルの裏手で暮らしているという猫の話を聞きました。
置き去りにされた猫は存在に気付いた子供たちにロッコと呼ばれるようになり、心配した住人たちからご飯をもらいながら何とか生き延びてきたそうです。
しかし、凍てつくニューヨークの冬を目前に、住人たちは地元の保護施設やシェルターへロッコの保護を求めました。
しかし、ロッコを受け入れてくれる施設はひとつもなかったそうです。
そして、住人たちの中にもロッコを引き取ろうとする人はいませんでした。

私はニューヨークの別の地域を中心に活動していてブロンクスへ行くことはありません。
しかし、ロッコの話を聞いたとき、何かをせずにはいられませんでした。
12月のある日、私の仕事は23時過ぎに終わるのでその日は大きめのケージを持ってロッコのもとへ急ぎました。

ロッコはビルの裏手、薄暗い一角に住人たちが置いたプラスチックケースの中にいました。

私が仕事を終えて戻ってくるまで、温かく安全に過ごしてもらうためにケージをシートで覆い、その中にトイレと毛布を重ねたベッドを作りました。
誰もその中に入ってこなければいいが・・・そう願いながら仕事へ向かい、その夜、再びロッコの元へ急ぎました。

ロッコの窮状を聞き、彼の力になろうと決めた私はロッコが十分なケアを受けられる環境を準備しようと思いました。

地元にある無死動物救助施設North Shore Animal League of America(ノースショア動物リーグ)がロッコのお世話を引き受けてくれることになり、それまで友人が運営する里親施設Puppy Kitty NY Cityが預かってくれることになっていました。
ロッコを迎えに行き、そのまま友人のもとへ走りました。

ロッコは鼻から出血があり、右耳の後ろに切り傷がありました。
友人が鼻をきれいにしてあげようとしましたが、少し触れただけでさらに出血してしまいます。
くしゃみがあり、呼吸が苦しそうであまり食欲がありません。
何とか栄養を摂らせたい友人が子猫用のミルクを与えてみると、ロッコは嬉しそうに飲みました。

一息ついたロッコは、喉を鳴らし、フミフミをして少し気分がいいことを伝えてきました。
そして、それまであまり熟睡できなかった分、その夜は温かいベッドでぐっすりと眠ることができました。

次の日、友人はロッコを動物病院へ連れて行ってくれました。
診察の結果、鼻の出血は上気道感染症が悪化したことが原因であり、また鼻の下にも皮膚炎を起こしていました。
歯と唇の内側にも問題が見つかり、感染症の治療のために抗生物質が投与されました。

住人たちに支えられていたロッコの外の生活でしたが、家猫だったロッコにとって環境の変化だけでも彼がダメージを受けるのは避けられなかったのです。
何より信頼していたはずの飼い主の仕打ちは、ロッコの心を深く傷つけたに違いありません。

友人はロッコを送り出すまでの間、精一杯の愛情を注いでくれました。
そしてロッコは友人に甘えることで心の傷を癒し始めていたのです。
友人はロッコの鼻を刺激しないように彼の頭にタオルを置いて優しく擦りました。
ロッコはそのタオルを使ったナデナデに喉を鳴らし、至福の表情を浮かべていました。
そして友人の家に着いて24時間後、呼吸もずいぶん楽になったロッコは少しずつ食欲を取り戻していきました。

友人はクリスマスを目前に、ロッコの未来を祝福する意味でセント・ニコラス・ロッコと新しい名前を付けました。

その後、ノースショア動物リーグへ移り、最高の環境の中で歯の治療も始めたロッコは確実に回復していきました。
感染症から回復したニコラス・ロッコは、初めて会った時の姿からは想像できないほどりりしい姿に変わっていました。

知人からロッコの話を聞いたとき、私は保護した猫を何匹も抱えていました。
しかし、それでもすぐに行動を起こさねばと思いました。

近所の子どもたちから住人たちへ、知人、そして私の友人たちとたくさんの人が彼の人生を変えるために力を貸していました。

新しい家族を探し始めたニコラス・ロッコはきっとこれからも周囲の人に支えられていくでしょう。
1日も早く、新しい家族との出会いに恵まれることを願うばかりです。