子育てを終え、子どもたちが独立していったとき私の夫は大学に戻り、人生の次のステップに向かって確実に歩みを進めていました。
私は自分の次のステップを考えたとき、全霊を傾ける仕事をしたいと思いボランティアで子猫たちのお世話を始めました。

夫はそんな私に反対もしなければそれ以上でもなく、相変わらず犬好きのまま子猫に関心を持つことはありませんでした。
ところが、フォスターと名付けた子猫を育てた短い間に、夫の人生は大きく変わりました。

フォスターは今年初めの嵐の中、ウジ虫に覆われた兄弟の亡骸の上に横たわった状態で発見されまました。
フォスターは深刻な感染症を患い、24時間体制の看護が必要でした。

過去に私がお世話をしてきた子猫の中で最も若く、生き延びることができるのか誰にも分らない・・・。
フォスターの養育を依頼されたとき、それが困難であることが容易に想像できましたが、私は断ることはできませんでした。

生後間もない子猫が生き延びるために、私は母猫の代わりになる覚悟を決めて子猫にフォスター(我が子のように育てる)という名前を選びました。
フォスターの名前を口にするたびに、自分の覚悟を思い起こすためでした。

お世話を始めたフォスターは、必死に生きようとしていました。

ミルクを飲み始めたフォスターは、ゆっくりと回復し始め小さくやせ細っていた身体に力が戻っていきました。
その後離乳を迎えると、食べる方法を知らないフォスターは食べ物をかじることから学ばなければなりませんでした。
ウエットフードのお皿と格闘して1/4の量を30分かけて食べると、そのままお皿の上で眠ってしまう、そんな日々が続きました。
水を飲むのを覚えるときも、噛むことを覚えるときも、フォスターは懸命に体で覚えようとしました。

夫はそんなフォスターの姿に何かを感じたようでした。

フォスターが活発に動き始めたとき、不思議なことに彼は夫を気に入り夫の頭によじ登ってさかんにキスをするようになりました。
今までたくさんの子猫と暮らしてきましたが、そんなことは初めてでした。
夫は戸惑っていましたが、さすがに悪い気はしなかったようです。

そして犬好きだった夫の日常に少しずつ変化が起こりました。

夫は仕事から帰るとまっすぐにフォスターのところへ行くようになりました。
ソファに陣取り自分によじ登ってくるフォスターとの時間を満喫するようになったのです。

夫とフォスターが楽しそうに過ごす様子は私にとっても一日の癒しの時間になりました。

その後も順調に成長したフォスターに新しい家族を探し始めたとき、幸運なことに私の親類の女性が名乗りをあげてくれ、フォスターを迎えに来ることが決まりました。
フォスターとあまりにも仲のいい夫の様子を見た彼女は、フォスターが淋しくないように夫も一緒に引き取りたいとジョークを言いました。

夫は淋しさを隠し切れない様子でしたが、フォスターの旅立ちを心から喜んでくれました。

里親は必ず別れの日を迎えます。
それは決して簡単ではありません。
でも
私は里親として育てることが、命を救うことにつながる尊い仕事だと思っています。

フォスターが旅立つ前日の夜、夫とフォスターはいつものようにソファの上で抱き合っていました。

フォスターは夫の頭によじ登り、両手を夫の顔に当てて何度もキスをしました。

生き延びることができるのか、誰にも分らなかったフォスターが元気に旅立って行きました。
フォスターが順調に成長できたのは、私と夫のふたりがかりで我が子のように育てることができたからだと思っています。

私が初めてシェルターから子猫を連れて帰って以来、何匹もの子猫たちを家に迎え入れ送り出してきました。
家中の部屋に猫がいる暮らしの中で、以前の夫は私が何をしているのか理解しがたいようでした。

フォスターを送り出したとき、夫は私にこう言ったのです。
『私はきみを誇りに思うよ。』

フォスターに続く猫たちが、我が家にやってきました。
子猫を抱きあげる夫は、パパの目をしています。

小さなフォスターの動画はこちらから:http://nekopple.com/cats/63929