ダーウィンは生まれたときから耳が聞こえません。
シェルターで出会ったときのダーウィンは、保護されるまでの過酷な暮らしの影響でとても痩せて弱々しい姿をしていました。

その日から私とダーウィンは一緒に暮らすようになったのです。

ダーウィンはとても愛情深い性格で、人間であれ、動物であれ、相手がだれであろうと思いやりを忘れませんでした。
自分の食べているものを後から来たほかの猫に取られても一切怒らず、自分から譲ってしまうような子です。
歳を重ねる毎にダーウィンはより優しさを増していきました。

ダーウィンは命あるものすべてを自分の友人だと思っている、私にはそんな風に見えました。

ダーウィンの一番の楽しみは私と出かける散歩でした。
いくつになっても好奇心を失わないダーウィンは、散歩の途中で出会う人に声をかけてもらうととても嬉しそうにはしゃぎました。

でも、年齢と共にダーウィンの身体はバランスを失い、身体のあちこちに関節炎を抱えるようになりました。
ダーウィンが楽しみにしていると分かっていても、私は散歩に出かけることを躊躇するようになっていました。

その日
私とダーウィンは近くの公園へ散歩にでかけました。
すると池の傍で芝生に座り遠くを眺めているおばあさんがいました。

私たちの気配に振り向いたおばあさんは、ダーウィンを見ると目を輝かせました。

この人は猫が好きなんだわ・・・

私はおばあさんに声をかけてみました。

彼女はウズベキスタンから来た85歳のリダさんでした。

リダさんは優しく声をかけながらダーウィンを撫でて鼻の頭にキスをしました。
ダーウィンはとても嬉しそうに喉を鳴らし、まるで子猫に戻ったようにリダさんに甘えました。

どこか寂しそうに見えたリダさんに、いつの間にか笑顔がこぼれています。

ダーウィンの嬉しそうな鳴き声とリダさんの笑い声がとても心地良く感じました。

ダーウィンを撫でながらリダさんは彼女の猫の話を始めました。

リダさんは12歳で亡くなった猫と一緒に暮らしていたそうです。
リダさんは彼女の猫がどんなに美しかったか、どんなに楽しい時間を過ごしたかを懐かしそうに話してくれました。

猫を亡くしたリダさんの寂しさがひしひしと伝わって、話を聞いていた私は涙がこぼれそうになりました。

この出会いをとても喜んでくれたリダさんは、私に住所を渡してくれました。
私はダーウィンを連れてリダさんを訪ねることにしました。

ダーウィンは敵意を持った猫でも、あまり猫が好きではない人でもなぜか仲良くなってしまう不思議な猫です。
どんな相手も彼の優しさに触れると癒されてしまいます。

膝を抱えてずっと遠くを見ていたリダさんは、引きこもりがちになっていたそうです。
でも、ダーウィンとの時間に見せてくれた笑顔は、とても若々しくて輝いていました。

ダーウィンにまたひとり、素敵な友人ができました。