モイスヒェンは体の大きさとその力強さで動物園の中でも指折りの人気者でした。
突然姿を現した小さな黒猫は、いつのまにかモイスヒェンが暮らす囲いの中に入り込んでしまっていたのです。
しかし、もし黒猫がモイスヒェンの怒りを買ってしまえばひとたまりもありません。

黒猫を心配するトーマスさんでしたが、よくよく見てみると、2匹の間には緊迫した雰囲気が一切ありません。
それどころか黒猫はモイスヒェンに怯える様子もなく、モイスヒェンに至っては黒猫が現れたことをむしろ喜んでいるようでした。

木製のベンチに並んで座る2匹の姿を目にしたトーマスさんは、衝撃を受け2匹の間に何か特別なものを感じました。

動物園ではしばらく2匹を見守ることにし、黒猫にムーシと名前を付けました。

モイスヒェンの囲いの中で一緒に暮らすようになった2匹にはすぐに友情が生まれ片時もそばを離れなくなりました。

2007年、動物園はモイスヒェンの囲いを拡張することを決め、2匹は囲いが完成するまでの間、別々の場所で過ごさなければなりませんでした。
動物園は2匹が一緒に過せる適切な場所を持たなかったのです。

離れ離れになった2匹はお互いにとても動揺していました。
ムーシはモイスヒェンの檻の前で一晩中鳴いていることもあったそうです。

完成したモイスヒェンの新しい囲いの中で、ようやく2匹は再会を果たすことができました。

そして動物園は、2匹がずっと一緒に暮らせるようにこれからも見守り続けることを正式に決めたのです。

2匹の寄り添う姿は見る人を幸せな気持ちにさせてくれます。
多くの人が2匹に会うために動物園を訪れました。

観客たちが帰ると、2匹はモイスヒェンの寝室の藁のベッドで一緒に眠りました。

深い絆で結ばれた2匹は、2010年、42歳という高齢でモイスヒェンが亡くなるまで一緒に暮らしていました。

ムーシがどこからやって来て、たくさんの動物たちの中からなぜモイスヒェンを選んだのかは分かりません。

モイスヒェンがムーシに向けるまなざしはどこまでも優しそうです。
ムーシは大きなモイスヒェンの優しさに魅かれ、彼女を親友に選んだのかもしれませんね。

因に、モイスヒェン(Mäuschen)はドイツ語で「かわいこちゃん」というニュアンスの「ネズミちゃん」を意味するそうです。