家族として暮らしていた人間に裏切られた5歳のヘリックスは、シェルターに来た当初、深く傷つき混乱していました。
このシェルターで働くマヤはヘリックスと会わなければならないと思い、彼に会いに行きました。
2017年、夏のはじめのことです。

マヤがケージを覗き込むと、彼女に気付いたヘリックスがゆっくりと立ち上がり、ゆらゆらと揺れながら懸命に近付いて来ました。

彼女の前で遊んでほしいと鳴いたそうです。

何度も倒れそうになりながら自分に近付いて来るヘリックスを見て、マヤは大きく心を揺さぶられました。
マヤはその日のうちにヘリックスを引き取る手続きを済ませ、一緒に自宅へ向かったのです。

マヤの家で暮らし始めたヘリックスは、マヤの家族に想像以上の歓迎を受けました。
マヤは、以前からシェルターで出会った猫を引き取り、家族として迎えていました。
ヘリックスはレイジー、サガン、タイソン、ランドーの4匹とすぐに馴染んだそうです。
中でもスーパーシャイなランドーは、ヘリックスとすぐに仲良くなり、お互いをとても大事にしてくれるとマヤは喜んでいました。

マヤと夫は、ヘリックスのポジティブな生き方にとても驚かされたと言います。
マヤはヘリックスを迎えて以来、彼のお世話を大変だと感じることが無かったというのです。

ヘリックスはわずか数メートルを歩く間に何度も転びます。
しかし彼はそのたびにすぐに起き上がり、また歩き始めます。
転びそうになる彼を、マヤや夫が支えようとするのをヘリックスはあまり好まないのだそうです。
しかし、何度も転ぶはリックスの胴体の被毛はこすれて短くなっていました。
マヤは、床にカーペットを敷き詰めようかと考えましたが、ヘリックスはカーペットやじゅうたんを避けフローリングを好んだためそのままでいることにしました。

ヘリックスは何度転んでもまた立ち上がり、自分で歩こうとする。
マヤと夫は、それがヘリックスの生き方なら彼を尊重すると決め、それを愛しました。

その代わり、彼が少しでも暮らしやすいように色々と工夫し試してみることにしたのです。

例えばトイレ。
ヘリックスはときどき、トイレの中で転んでしまうことがありました。
するとマヤは、トイレの入り口を広くしトイレが床の上を滑らないように位置を固定しました。
おかげで、ヘリックスはトイレからお風呂場へ直行することがほとんどなくなりました。

ヘリックスは毎朝、家の庭で散歩をするのを楽しみにしています。
わずか数メートルを歩くのに、ヘリックスは何度も転び、とても時間をかけて歩いています。

あるとき、ヘリックスが庭で虫と遊んでいたとき、近所から芝刈り機の轟音が聞こえてきました。
大きな音が苦手なヘリックスは、急いで家の中に戻ろうとしましたが、慌てているせいか何度も何度も転んでしまいました。
マヤの夫がヘリックスの両側から支えようとすると、ヘリックスは振り切るように、何度も倒れそうになりながら急ぎ足で家の中へ向かったそうです。

猫たちが楽しみにしているおやつを食べるのもヘリックスはとても時間がかかります。
彼の頭が常に小刻みに揺れているので、固形のおやつを口に捕まえるまで、鳥がえさをついばむように何度も何度もおやつをつついているように見えるのです。
マヤは、固形の食べ物が滑らないように、タオルの上に乗せてあげるようにしました。

どんなに時間や手間がかかっても、自分にできることは自分でする、そんなヘリックスをマヤと夫は温かく見守りました。

マヤの家で、ヘリックスは家族の誰からも愛される存在になりました。
毛繕いにも苦労するヘリックスのために、ランドーはヘリックスの身体を隅々までお掃除します。
マヤや夫とオモチャで遊ぶとき、他の4匹は決してヘリックスの邪魔をしません。
彼らはヘリックスが自分たちと少し違うことを、彼の個性としてとらえました。

障害ゆえに元の飼い主に捨てられたヘリックスは、マヤと出会い、彼女の家族の中で生き生きと彼らしく生きる居場所を得ました。
ヘリックスは、何度転んでも立ち上がり、また歩みを始める・・・彼の生き方に導かれ、彼にとって最高の永遠の家を見つけることができました。