美しい黒猫のドロシーは、妊娠後に元の飼い主に捨てられてしまいました。
それに気付いた親切な近所の人がドロシーを保護し、ブリティッシュコロンビア州、ラングリーにある動物保護施設Tinykittensへ連れて来てくれました。

ドロシーはとても若い母猫でした。
施設に連れて来られた当時、深刻なノミのアレルギーとお腹の寄生虫で最悪のコンディションでした。
2014年11月17日、ドロシーは無事に6匹を出産しましたが、2匹はとても小さくその中の1匹は他の子猫とは少し違った顔をしていました。

口唇裂と呼ばれる先天的異常を抱えて生まれたマーベルは、68gと兄弟の中でも2番目に小さく生まれ、唇から鼻にかけて裂けた状態でした。
そのため自分でミルクを吸うことができず、マーベルが生き残るためには誰かの助けが必要でした。

施設はスタッフのシェリーにマーベルのお世話をお願いしました。
シェリーは2~3時間おきにチューブや哺乳瓶を使ってマーベルにミルクを与えなければなりませんでした。

シェリーの献身的な看護に応え、小さなマーベルは一生懸命にミルクを飲み、少しずつ大きくなりました。
マーベルの兄弟の中で一番小さく生まれたマンチカンは生まれたとき66gでしたが、生後5日を過ぎると自分でミルクを飲めるたくましさを見せました。

母のドロシーも体力を取り戻すために看護されていましたが、子猫たちを抱きしめると母親らしいとても誇らしそうな表情をしました。

それぞれに必死に生きようとするドロシーたち親子を、施設のスタッフは看護をしながら温かく見守っていました。

生後間もなくマーベルを診察した獣医師は、専門医にアドバイスをもらいながらマーベルの経過を見守っていました。
そして味覚に影響を受けていなければ、マーベルが順調に成長できる可能性が高いと言っていました。
懸命にミルクを飲み、少しずつではありますが体重を増やしていくマーベルに、獣医師は味覚障害はないと判断し、私たちはホッとすることができたのです。

5週間のミルクを卒業したマーベルは、離乳する頃には食事の際少し手助けが必要な以外、看護の必要はなくなるほど元気に成長していました。

大きな手を持つマーベルに、スタッフは彼がたくましく成長するに違いないと思いました。
成長するにつれ、マーベルの毛はフワフワと豊かになり、トレードマークの鼻の蝶々はくっきりと顔の真ん中に羽を広げていました。

生後3か月を迎えようとしていた2015年2月、マーベルに、彼を迎えたいという家族が現れました。
しかも家族は、マーベルが兄弟の中でも一番仲の良かったトトと一緒に迎えたいと言ってきたのです。

こうして保護施設で共に育った兄弟に別れを告げ、2匹は新しい家族のもとへ旅立って行きました。

新しい家に到着した2匹は、早速家中を探検して回り、満足してお昼寝を始めたそうです。
彼らを迎え入れた家族の家には、2匹の到着を心待ちにしていた幼い姉弟がいました。

その後、ドロシーをはじめマーベルの兄妹すべてが新しい家族のもとへ旅立って行きました。

幼かったマーベルとトトは現在雄大なライオンのようにたくましく成長していました。
相変わらず仲のいい2匹は、いつも一緒に過しているようです。
マーベルのトレードマーク、鼻の上の蝶は可愛らしい姿を優雅な姿に変えていました。

1歳を待たずに妊娠、出産したドロシーは、身勝手な飼い主に捨てられ、自身も辛い病気と闘うことになってしまいました。
生まれてきた子猫たちは、それぞれに強い意志を持って生きのび、それぞれに自分の家へ旅立つことができました。
マーベルはハンディを背負って生まれましたが、彼は一度も諦めることはありませんでした。
彼を支えたシェリーは、必死にミルクを飲むマーベルに疲れを忘れたと言います。
懸命に生きる彼らにはこれからも、それぞれの家で前向きにたくましく人生を楽しんでほしいと願っています。