私は店頭に並ぶ車をひとつひとつ確認していました。
1台の車のボンネットを開けたとき、小さな子猫がエンジンルームから頭を突き出していました。
ビックリしましたよ。
どうやってそうなったのかは分かりませんが、そのままでは引き出してあげることができませんでした。
整備士のひとりに声をかけ、子猫を助けるために協力してもらいました。
それから数時間後、ようやく子猫を引き出すことができました。

勤務時間を越えて協力してくれた整備士にお礼を言って、私は子猫を連れて帰ることにしました。
かなり怯えている子猫を落ち着かせたくて、ヘッドレストカバーに優しく包みました。。

ここ数日、この辺りはまとまった量の雨が降っていました。
雨を避けた子猫がいつの間にか店に紛れ込んだのかもしれません。
子猫がいつからエンジンルームに隠れていたのかは分かりません。
試運転で車を走らせたこともあったので小猫が巻き込まれなかったのは幸運でした。
いずれにしても、子猫はいくところもなければひとりぼっちでした。

自宅には子猫を迎える仲間が妻のタミ―と待っていました。
最初にやって来たのはボクサー犬のレノックスでした。
レノックスは、ろくな設備もないブリーダーから救助され、私たちが引き取った大事な家族です。
私はレノックスをこれ以上にない最高の犬だと思ってきました。

レノックスは子猫を見るなり目を輝かせ、子猫に挨拶しました。
どうやらレノックスは子猫を気に入ったようですが、子猫が引いてしまうくらい興奮してしまいました。
子猫の後をどこまでも付いてまわり、離れなくなってしまったのです。

私はレノックスの他にすでに2匹の猫と一緒に暮らしていました。
2匹は私が働く自動車販売店の裏で同じように見つけて家に連れてきたのです。
猫たちも子猫を受け入れてくれたのですが、とにかくレノックスの子猫に対する歓迎ぶりは私の想像以上でした。

レノックスは子猫のことを自分がが世話をして守ると決めたようでした。
とにかく、子猫の一挙手一投足を見守って何かあれば自分が助ける気でいるようです。
子猫がタミ―の膝に抱かれているときでさえ、子猫のそばに張り付いて一時でも目を離さないのです。

子猫がソファの上で昼寝をしていると、レノックスは傍ですっと待機しています。

ソファに子猫のための大きめの毛布を置いてあげました。
レノックスは毛布で昼寝をする子猫のそばに寄り添い、なおさら離れなくなってしまいました。

レノックスはまるで病気にかかってしまったようでした。

子猫が別の部屋に行ってしまうと、レノックスは子猫が部屋を出るまで外で根気よく待っていました。
子猫にしてみればうっとおしいくらいのレノックスの護衛ぶりですが、当の子猫は適当にあしらってうまくやっています。
子猫の方はレノックスの熱の上げようを全く気にしていないようです。

ほんの少し前までひとりぼっちでいた子猫は、恐らくずっと張り付いて離れそうにない、心優しい友人と出会うことになりました。
子猫が我が家の一員に加わったことで、私たちは最高の犬だと思っていたレノックスの更に愛すべき一面を目撃することになりました。
子猫の成長と共に、レノックスと子猫の友情がどう発展するのか、私たちの楽しみが増えましたね。