その猫をはじめて裏庭で見たとき、私に気付いた猫はまっすぐに私の方へ歩いてきました。
腰を下ろしていた私の背中に回ると、いきなり肩に飛び乗って来たのです。
『えっ・・・?』

猫は私の顔に頭を擦りつけ、喉を鳴らし始めました。
『ちょ、ちょっと…』
私の首にまとわりつき、いたるところに頭を擦りつけていました。

とてもフレンドリー・・・と言うより、とてもなれなれしい猫を私はメスだと思っていました。
そして、パーソナルスペースキャットと呼んでいました。

よく見ると耳にカットされた跡がありました。
猫は近所の野良猫たちが形成するコロニーに住む1匹で、動物保護団体の避妊手術を受け、もとの棲家に戻されていたようです。

昨年12月のはじめ、この地域には珍しく寒い日が続き、雪が降り出しました。心配になった夫と私は、庭に来ていたもう1匹の猫と一緒にその猫を家の中に避難させることにしました。

家の中に入った猫はベッドが気に入ったようで、まるでずっとこの家に住んでいたように寛ぎ始めました。

雪がおさまり、私たちは猫が外と行き来できるようにしました。
窓の外にエアコンの室外機があります。
猫は部屋の中で私たちの話声がしたり、部屋の電気がつくと室外機の上に飛び乗って部屋に入れてくれと鳴きました。

殆どを家の中で過ごすようになった猫は、すっかり家猫になる準備ができていました。

私たちは1年前にここに引っ越してきたばかりでまだペットを飼うことに積極的ではありませんでした。
でも、家の中で過ごすようになった猫はとても嬉しそうでした。
家族が寛いでいると必ずやって来て、べったりと抱きついては幸せそうな顔をしました。
始めから馴れ馴れしかったけれど、私たちとこの家がよほど気に入ってくれたのだと思いました。

私たちはクリスマスを楽しむために取っておいたお金で猫にワクチン接種を受け、マイクロチップを入れるために動物愛護協会の病院へ連れて行きました。

すると、思いもよらないことが起こったのです。
猫からマイクロチップが見つかったのです。
獣医師はすぐにデータの確認に診察室を出て行きました。
私はショックのあまり涙をこらえることができませんでした。

もはや家族の一員と思っていた猫に、待っている家族がいるかもしれないなんて・・・
獣医師はなかなか戻ってきませんでした。

ようやく戻ってきた獣医師が猫のことを話してくれました。

猫は野良猫として生まれ、ずっと猫のコロニーで暮らしていたそうです。
そこで一旦保護され、去勢手術を受けてコロニーの猫として登録されマイケルと名付けられ元のコロニーに戻されていたのです。
猫は4~5歳なのだそうです。

獣医師は私たちにこう言いました。
『メリークリスマス、あなたたちの猫です。』

私たちは猫にキメラと名前を付けました。

キメラは晴れて私たち家族の一員となり、大好きなベッドを占領しています。
相変わらず、夫の胸に乗って一緒に動画を見るのが好きです。
そして、私のところにやって来てあの時と同じように首に抱きついて喉を鳴らしています。

とても初対面と思えない馴れ馴れしさは、あの時彼が私たちを自分の家族として選んだからでしょう。
キメラと一緒に避難させた猫ももちろん元気、彼は気ままにお昼寝三昧です。

裏庭には今も数匹の猫たちがときどき姿を現していて、私たちはご飯をごちそうしたりしています。

初対面で我が家を選んだキメラは、彼を迎えた私たちに多くのものを届けてくれました。
私はキメラに感謝しかありません。