会場の一角で見かけた猫に声をかけると、警戒した猫はその場から走り去ってしまいました。
猫が逃げて行った後ろに、小さな子猫が足をもつれさせて転んだのが見えたのです。
その子猫は走るにはまだ小さすぎました。

逃げた母猫が戻ってくるのかは分かりません。
私たちはその場に子猫を置いていくことができませんでした。

子猫を抱くと震えているのが分かりました。
ひとりぼっちになってしまい、怯えているのだと思いました。
なんだかとても悲しそうな顔をしているので、母猫を脅かすことになってしまい申し訳ない気持ちになりました。
私たちは子猫をミルトンと呼ぶことにしました。

お腹が空いているだろうと思い、ペットショップへ向かいました。
何を買えばいいのか分からなかったので、すぐ傍にいたブルーのシャツの女性店員に声をかけました。
『小さな子猫にあげる食べ物が欲しいんだけど・・・』

その女性はレジに並んでいる間、ミルトンを抱いていてくれました。
女性に聞かれ、ミルトンを保護したいきさつを話し始めると、彼女が言ったんです。
『私が連れて帰ってもいいかしら?』

ミルトンのごはんを買いに行ったのに、こいつは家まで見つけてしまいました。

私たちは女性の仕事が終わるころ、ペットショップに来る約束をして店を出ました。

思わぬ展開にビックリしましたが、ミルトンを大事そうにしてくれた女性ならきっと可愛がってくれるだろうと思いました。

自宅に戻った私たちは早速ミルトンにミルクをあげました。

お腹が満たされたミルトンはすっかり安心したらしく、もう震えてもいないし、それどころか笑っているように見えました。

ふたりでミルトンの相手をしているうちに、すっかり彼に心を奪われている自分たちがいました。

時間が経つにつれて、ミルトンがもうすぐいなくなってしまうことを思うと、なんとも言えない寂しい気持ちに襲われました。

ミルトンが大きくなるまで、あの女性にミルトンの写真を送ってもらうようお願いしなければ・・・
ミルトンが元気でいるか確認したいと思いました。

たった数時間
一緒に過したミルトンとお別れの時間です。

私は猫を飼ったことがありません。
だからミルトンは私にとって最初の猫です。
ミルトンと過ごした時間は短かったけれど、彼は忘れられない子猫になりました。

Bye、ミルトン。