ミニチュアダックスフンドのグレイシーをベッドに入れる前に一緒に庭に出て涼んでいるときのことです。
突然グレイシーが吠えはじめました。
グレイシーが吠える方向には椿の茂みがあり、私はその下に光っている目を見つけました。

茂みの中から、薄汚れてはいましたが、大きくてしっぽの先端が白いとても美しい猫が出てきました。
私は野良猫がお腹を空かせているだろうと思い、家の中からボールに入れたキャットフードを持ってきて野良猫の前に置きました。
野良猫はすぐに食べ始めました。
食べ終わるとお礼を言うように鳴いた猫は立ち去って行きました。

次の夜、再びその猫は庭に姿を現し、私はごはんをごちそうしました。
それから猫は毎晩庭に現れるようになりました。
私は猫をファンシーと呼ぶようになり、彼と会うのが楽しみになっていました。
1週間ほど経つと、ファンシーは朝晩2回ポーチに姿を見せて私を待つようになりました。
その後1か月ほどファンシーは我が家に通い続けていました。

夫と私はグレイシーの他にも2匹の猫と一緒に暮らしてきました。
私の夫はそれで十分だと思っていたので、私にファンシーをシェルターへ連れて行き、新しい家族と出会う機会を与えるべきだと言いました。

翌朝、私はご飯を食べるのに夢中になっているファンシーを抱き上げ、用意していたキャリーケースに入れました。
そして夫とふたりでシェルターへ向かいました。

私にキャリーケースを返してくれたスタッフにファンシーの様子をたずねると、彼は何度もケージの扉を頭で突いて開けようとしていたと話してくれました。

私はシェルターから帰り道、車の中でずっと泣いていました。

私はシェルターのウェブサイトでファンシーの写真が掲載されるのを確認しようと思いました。
ところが、彼の写真はなかなか掲載されませんでした。
私は写真が掲載される前に、ファンシーが新しい家族と出会えたのだと思っていました。

4月の終わりのある早朝、午前5時半を回った頃でした。
私は夫がキッチンで誰かと話している声で目を覚ましました。
誰と話しているのだろう・・・
キッチンへ向かうと、夫は椅子に腰かけ、彼の前に座り彼を見上げている猫と話していました。

尻尾の先端が白いフワフワのその猫は、私に気付くと向きを変え、私に向かって走ってきました。
私はすでに涙をこらえられなくなっていました。
『おかえりなさい!ファンシー』
嬉しそうに鳴いているファンシーを私は思いきり抱き締めました。

連絡を入れたシェルターのスタッフは驚き、そしてファンシーの無事をとても喜んでくれました。

シェルターのスタッフの話によると、ファンシーは、私たちが連れて行った僅か20分後にシェルターを脱走していたのです。
シェルターから我が家までは約8km。
しかし途中には交通量の多い道路や鉄道路線があり、人通りの多い街並みが続いています。
ファンシーは約1か月をかけて私たちのもとへ辿り着いていました。

ファンシーは今、彼が永遠の家と決めた我が家で暮らしています。