ハーマンは歩くときに体がぐらぐらと揺れてしまうために、うまく歩くことができません。
そのため、食事や排せつの際に人間の介助を必要とします。
彼の顎は歪んでいるために左下の牙が常に口から出ており、彼の視野の一部が見えていない可能性がありました。

2013年8月、ハーマンはコロラド州デンバーの動物シェルターに前の飼い主によって連れて来られました。
シェルターで4か月を過ごしたハーマンは新しい家族との出会いに恵まれず、養育主の家に移されました。

養育主はハーマンに愛情を注いでいましたが、彼に新しい家族が見つかる可能性は低いと感じていました。
カリフォルニア州バーバンクにある動物保護施設Milo's Sanctuaryのボランティアスタッフが、SNSを通じてハーマンを知りました。
Milo's Sanctuaryは健康な猫の他に、障害や重い病気のために特別なケアを必要とする猫を引き取り、生涯にわたってお世話をするプログラムを実施していて数匹の猫たちが暮らしてきました。
施設はハーマンをその一員として迎えることを決め、養育主に連絡を取りました。

施設にやって来たハーマンはとても気さくで、瞬く間に施設の誰からも愛される存在になりました。
ハーマンはお腹を擦られるのがお気に入りで、朝起きると仰向けに寝て盛んにアピールします。
それがハーマンの朝のご挨拶になりました。

今から1年ほど前、施設のスタッフがハーマンのある動きに注目しました。
いつものようにお腹や頭を撫でていると、ハーマンは片方の足の先を曲げ、ゆっくりと巻き込むように動かし、もう片方の前足も同じように動かし始めました。
何度も何度も同じ動きを繰り返しています。

スタッフはハッとしました。
ハーマンがフミフミをしていることに気付いたのです。
約2年間一緒に暮らして来たハーマンがフミフミをしたのはその時が初めてでした。
足を自由に動かせないハーマンにとって、それはとてもエネルギーを使わなければならないことをスタッフは知っていました。
スタッフは心を揺さぶられるような感動を覚えました。

『嬉しい!気持ちいい!』
スタッフたちは全力で表現するようになったハーマンに元気をもらい、ハーマンに会う人はみんな彼に魅了されていきました。
『彼は限界を知りません。私たちは彼から愛や強さ、そして人生の楽しみ方を教えてもらった気がします。
私たちは特別なケアを必要とする猫たちについて学んできましたが、実際には、時に弱々しく見えるハーマンから信じられないくらいたくさんの優しさを受け取っていたのです。』

ハーマンから愛情を受け取るのは人間だけではありません。
ハーマンが施設に来て6か月後、施設は新たに小脳形成不全を抱え重度の障害を持つベアを迎え入れました。
ベアもハーマンと同じように歩くことができません。
ハーマンは、新入りのベアに対し早速お兄ちゃんぶりを発揮し、ベアが施設の暮らしに慣れるのを助けました。
彼らのベッドはいつもとなり合わせに置かれ、2匹は寄り添って過ごしています。
2匹が横になったまま一生懸命足を動かして遊ぶ姿を、スタッフたちは笑みを浮かべて見守っています。

ハーマンは普通とは少し違った外見をしていますが、彼が人生を楽しむのにそれらは全く問題ではありません。
一部の人は、ハーマンを『醜い』『不気味』という人もいますが、ハーマンの内面を知る人は『パーフェクト』な『イケメン』だと思っています。
そして、ハーマンは人生を楽しむ達人だと思っています。

ハーマンに愛情を注いでいた養育主の女性には、彼女の活動を必要とするたくさんの猫たちが待っていました。
彼女が活動を続ける限り、ハーマンにとって一時的なママでいるしかなく、彼女はハーマンに永遠の家が見つかることをずっと願っていました。
保護施設から連絡を受けた女性とシェルターは、プログラムの存在をとても喜んで送り出してくれました。
女性やシェルターのっスタッフ達もハーマンの内面に魅了されていたのです。

彼の永遠の家となった保護施設で、ハーマンの個性が大きく開花し周囲に笑顔をもたらす存在に成長しています。
お腹を擦られるハーマンは、今日も全力で喜んでいます。
ハーマンが幸せを感じるたびに、スタッフは彼から優しさを受け取っています。