6年前、勤務先の近くにある大型のゴミ箱の傍でその猫と出会いました。
野良猫がどうやってそこに辿り着いたのかも誰も知りませんでした。
とても警戒心が強く、誰も猫に近づくことができませんでした。
私も近付こうとしたのですが、猫はゴミ箱から飛び降りると走り去ってしまったのです。

野良猫と仲良くなりたかった私は、彼女がゴミ箱に飛び込む必要がなくなるように、毎日ご飯をあげるようになりました。
私が持ってくる食事が彼女のためであることを分かってもらうには、私を受け入れてもらわなくてはなりません。
彼女の食事を持って置いて来るだけから始めて、彼女が逃げないように少しずつ近付いて行きました。
とても長い時間をかけて彼女の傍まで近づ蹴るようになり、ついに撫でることができるようになりました。

私にとって忘れることのできない日があります。
私が愛車の中でランチを食べていたときのことです。
あの野良猫がやって来て、私の膝の上に飛び乗ってきたのです。
私はその時のことを今でも鮮明に覚えています。
私にとって最高の瞬間でした。

私は野良猫をダンプスターと呼ぶようになり、私は彼女の友人になることができました。

その後もダンプスターは私以外の誰も近付くことを許しませんでした。
私と過ごすダンプスターはとても甘い猫でしたが、ほとんどの人が彼女の傍に近づこうものなら足を蹴られたり噛まれたりしていたようです。

ダンプスターは日中の殆どの時間を私の愛車の中で寝て過ごしました。
勤務先の近所には他にオフィスがありません。
私は車を降りるときダンプスターが出入りできるくらいに車の窓を開けておきました。
雨の日は窓から雨が降り込まないようにプラスチック製の雨よけを付けるようにしました。
私の愛車の中はダンプスターの毛だらけになりましたが、私はそれに満足してきました。

私はダンプスターのためにささやかなキャットハウスを作ることにしました。
私が帰宅した後の彼女の家を作りたかったのです。
父が手伝ってくれ、なかなかの出来栄えでした。
・・・残念ながら、ダンプスターには見向きもしてもらえなかったのですが。

冬を迎え、私は勤務先に相談してダンプスターを動物病院で過ごしてもらうことにしました。
警戒心の強い彼女を説得するのは大変でしたが、雪やみぞれが降り始めると彼女も仕方なく勤務先の好意を受け入れてくれました。

私はよく同僚たちが帰宅した後車の中でダンプスターと一緒に過しました。
ほとんどの人がダンプスターを気性の荒い猫だと思っていますが、そうではありません。
彼女は私の首の周りや顔に摺り寄ることが大好きで、ときどき引っ掻いてしまうこともありますが、それは彼女の愛情表現だと分かってきました。

ダンプスターの信頼を得ることができた私は、自然に彼女を家族に迎えたいと思うようになりました。
しかし、それを実行に移すことはできませんでした。

勤務先の病院がある地域には、交通量の多い道路があり、近所の人たちが行き交っています。
勤務先の病院は、彼女の安全な生活を願って院内に定住させることを検討しました。
しかしダンプスターは、雪の降る日さえ楽しそうに外を走り回っていました。
冬の間、彼女は仕方なく病院内で暮らしていたのです。
そして私も病院も、ダンプスターが病院のある地域を自分の家だと思っていることに気付きました。

私は外を愛するダンプスターの生き方を曲げてまで、彼女を飼うことはできないと思ってきました。

ダンプスターに家族として認められたという自負を持つ私は、これまで一日2度の食事を運び、彼女の健康を管理してきました。
ダンプスターは外で狩りをして獲物を捕らえています。
それもあって、定期的なワクチンの接種、ノミやダニの予防、そしてレントゲン検査を受けてもらっています。

冬にはダンプスターと私は勤務先の病院で過ごし、雨が降った日は仕事が始まるまでに彼女を乾かしてきました。
今でも彼女は私が仕事をしている間、愛車で昼寝をして過ごしています。
こうして6年間、私とダンプスターの信頼関係は続いてきたのです。

ダンプスターは私を彼女の友人と認めてからも、外の生活を愛するという点で私との距離を保ってきました。
しかし最近、もしかしたら、彼女の心が変わるときが来るかもしれないと感じるようになりました。
いずれそのときが来るまで、私とダンプスターの友人関係が変わることはないでしょう。
少なくとも、ダンプスターは彼女を愛する人間がいることを知っています。