道路から少し離れた所に、倒れた木の枝が折り重なっているところにそれはありました。
辺りは薄暗くなっていましたが、遠目にも四角い箱に見えました。
父は車を降りて箱に近づいて行きました。

道路に面した方に四角い穴が開いているようです。
中を覗いた父は言葉を失いました。
そして私は父の声に耳を疑いました。
『猫だよ、猫がいるんだ!』
発泡スチロールの白い箱の中に、猫がいました。

よく見ると猫は2匹居ました。
2匹とも寒さに凍え、動くこともできませんでした。

その場所は、辺りに民家もなく父の車以外通る車もありませんでした。
道の両側に林が広がり、寒々とした景色がどこまでも続いていたのです。

父は箱ごと猫を車に運び、私たちは家へと急ぎました。

家に戻ると母が家の中をいつもより温めていてくれました。
猫たちはすぐに物陰に隠れてしまいました。

発泡スチロールの箱の中には薄い毛布が敷かれ、キャットフードが置かれていました。

私たちは猫たちが慣れるまで見守ることにしました。

少し経つと、比較的元気のある1匹が潜り込んでいたところから出てきました。
もう1匹の猫は小さくて痩せていました。
目の周りに目ヤニが固まっていて全身がとても汚れていました。
目がよく見えないのか元気がなく、丸く固まっていました。

私たちは猫をお風呂に入れてあげることにしました。
お湯で体を温め、痩せている猫の汚れていた目の周りをきれいにしました。
タオルで乾かし、毛布にくるんであげると猫はとても気持ちよさそうにしていました。
しばらくすると、2匹は大きな声で鳴き始め、元気な猫の方は私の膝の上から離れなくなりました。
体が温まって、気持ちもほぐれてきたようです。
痩せた猫は、毛布にくるまったまま眠りにつきました。

猫たちを動物病院へ連れて行きました。
痩せた猫は、衰弱してあまり動けませんでした。
獣医師はまだ決していい状態ではないが、十分な栄養をとれば回復できると言いました。
家に戻った猫は、父の足に摺り寄っていました。

寒さから解放された猫たちは、少しずつ私たちの家に溶け込んできました。
この家が自分たちにとって安全な場所だと思い始めてくれたようです。

父は凍りかけた猫の顔を見て心が張り裂けそうだったといいます。
だから、元気を取り戻していく猫たちの姿が嬉しくて仕方がないようです。

今思い出してみても、父が雪景色の中の白い箱を発見できたのは奇跡的でした。
あの時の父は、一瞬目に入っただけの箱をどうしても確かめたいと言いました。
もしかしたら、2匹の猫たちの生きたいという想いが発見した父にそうさせたのかもしれませんね。