夕方の6時半ごろでした。
ノルウェーウヒ(米松)の下に横になっていた子猫が、とても大きな声でずっと鳴き続けていました。
私に気付いた子猫は立ち上がると、茂みの中から出て来て私に向かって一直線に歩いて来たのです。
子猫の鳴き声は『お腹空いたぁ』そう言っているようでした。

どこから来たのか、生後数週間ほどの小さな子猫でした。
ほかの猫の姿は見当たらず、後で近所に確かめたのですが誰も子猫を知る人はいませんでした。

私に向かって真っすぐに歩いてくる子猫を待ち構えるために、私はかがんでいました。
私のところへたどり着いた子猫は膝に縋りついて、ずっと鳴き続けています、『お腹空いたぁ』って。
家の中からボールに入れた猫のご飯を持ってきて子猫の前に置きました。

子猫はよほどお腹を空かせていたのでしょう。
あっという間にボールの底が見えてくるほど一気に食べました。
それも声をあげながら、まるで『おいしい、おいしい!』そう言っているように聞こえました。

すぐに日が沈む時間でした。
『うちでお世話をするしかないようだね。』

私は、食べ終わった子猫を抱き上げて一緒に家の中へ戻りました

汚れていた子猫をきれいにしてあげると、私の膝に上がってきました。
私を見上げる目は生き生きと好奇心に満ちていました。
私は子猫をフランシスと呼ぶことにしました。

私の前に姿を現した小さな子猫は、あっという間に家族の注目の的になりました。

とても積極的で好奇心いっぱいのフランシスは、私たち家族をいつも笑わせてくれました。
彼女は何かに興味を持つと、自分で確かめないと気が済まない子でした。
姿が見えないと思ったら、思いもよらないところで寛いでいるフランシスを見つけたものです。

初対面の私にまっすぐ歩いて来たフランシスの物怖じしない個性は、ますます磨きがかかっていきました。
フランシスは我が家の中に何も怖いものはありませんでした。

フランシスの好奇心はとどまることを知らず、私が買い物してきたものを誰よりも早く、私よりも先に確かめるのはフランシスでした。
小さなフランシスと暮らし始めた私たちは、かつてないほど笑いの絶えない毎日を過ごすことができました。

茂みの中で私を見つけたフランシスは、迷うことなく立ち上がりまっすぐに向かってきました。
そして、お腹を空かせていた彼女は私に向かって躊躇なく訴えてきました。
私はご飯をあげ彼女を放っておくことができずに我が家に迎えました。
無邪気なようで、フランシスの直感はどれも間違いありませんでした。
満ち足りた寝顔を見せるフランシスに、私たちも満たされています。