ニューヨークのブロンクスにある動物保護施設、Magnificat Cat Rescue and Rehomingでボランティアとして活動するナンシーさんは、猫がふらふらと歩く姿を見て、歩行に異常があることに気付きました。

いつもウェットフードを持ち歩いているナンシーさんが猫の前にフードを置いてあげると、一生懸命に食べ始めました。

その猫には助けが必要だと思ったのですが、その時の彼女はキャリーケースを持っていませんでした。
その日の午後、その場所へ猫を探しに行くと、猫は出会ったときと同じ場所で横になってナンシーさんを待っていたのです。

ナンシーさんはすぐに動物病院へ猫を連れて行きました。
診察を受けた猫はすでに去勢手術を受けていましたが、マイクロチップは見つかりませんでした。
年齢は推定5~7歳。
とても痩せて衰弱が激しく、体中に伸びた毛が所々で絡み合い固くなっていました。
そして、脳に詳しい検査が必要な異常が見つかったのです。

猫は、ナンシーさんにキャリーケースで病院へ運ばれる間も診察を受ける間もとてもおとなしくしていました。
衰弱していた猫は、疲れ切って抵抗する元気もなくしているようでした。

ナンシーさんは猫にアッティラと名前を付けました。
アッティラはそのまま2日間、動物病院で過ごすことになりました。

施設では治療と検査が必要なアッティラのために、里親のクリスさんにお世話をお願いすることにしました。

動物病院でお風呂に入れてもらい、絡み合った毛を刈りこんでもらったアッティラは少しスッキリした様子でクリスさんの家へやってきました。
家の中を見て回ったアッティラは、1時間ほどすると安心したようにクリスさんの胸に抱かれてお昼寝を始めました。

クリスさんの家には、3匹の猫が飼われていました。
驚いたことに、クリスさんの猫たちは始めから新入りのアッティラをいたわるような接し方をしてきたのです。
まるで衰弱しきっていたアッティラの事情を知っているかのような猫たちの対応に、施設のスタッフやクリスさんまでがとても驚いたそうです。

その後詳しい検査を受けたアッティラは、原因は分かりませんが、前頭葉に損傷を受けていることが分かりました。
記憶、社会的行動、人格的行動をつかさどる部分に損傷があるため、アッティラは右目の視力、右足の運動、そして様々な生活のために必要な行動に支障が見られました。

アッティラは毛繕いをしません。
本来きれい好きの猫は、1日のうちでもかなりの時間を費やして毛繕いをするものですが、アッティラはそれを全くしないのです。
また、ナンシーさんが感じた歩行の異常もそれが原因だったようです。
一度損傷した脳を元の戻すことはできませんが、薬を服用することで生活の質を向上させることが可能になります。
クリスさんの家でアッティラは治療への一歩を踏み出すことになったのです。

クリスさんの猫たちは、人間たちが驚くほどアッティラへのいたわりを見せてくれました。
黒猫のエンツォは、毛繕いをしないアッティラを自分のベッドに連れて行き熱心にからだの隅から隅まで毛繕いをしていました。
他の猫もマネをして、アッティラの毛づくろいをする姿があちこちで見受けられるようになっていました。
アッティラは自分のベッドを持っていますが、誰かと一緒に眠る方が安心するようでアンリは淋しがり屋のアッティラのためにお昼寝に付き合ってあげます。

アッティラは脳の損傷のために感情の起伏がほとんどなく、一見とても穏やかに見えます。
しかし、ナンシーさんに抱きついて来たアッティラは『助けて!』と強い意志表示をしていました。
アッティラは過酷な状況の中にあっても、「生きたい」と強く願っていたのです。
クリスさんの家に迎え入れられたアッティラは、温かい仲間たちに支えられて今も戦っています。