子猫は折れてしまいそうなほど痩せて、衰弱した上に体にはウジ虫が湧き、かろうじて生きている状態でした。
幸いなことに車に段ボール箱が乗っていたので、子猫を掬い上げ、箱に入れると急いで自宅へ向かって車を走らせました。
箱を覗き込んだとき、小猫のまぶたと鼻はガサガサに荒れ、全身が傷だらけになっているのが見えました。
助手席の友人が箱を抱えてくれていたのですが、子猫は必死にもがいて何度も箱から逃げ出そうとしていました。

私の父と兄がアレルギーを持つため、私の家では猫を飼ったことがありませんでした。
でも私は、ボロボロになっても必死で生き延びようとしている子猫をどうしても放っておくことができませんでした。
何とか助けてあげるべきだと思ったのです。

子猫の衰弱ぶりを見た母は、子猫の引き取り手が見つかるまでは自宅でお世話をすることを許してくれ、私を励ましてくれました。
私は子猫を温かいお風呂に入れ、早速お世話を始めました。

動物病院へ連れて行くと、抗生物質が処方されました。
自宅の戻った子猫はその後数週間、一進一退を繰り返し殆どの時間を眠って過ごしました。
私は何度も眠って動かない子猫を死んでしまったのかと思い、そのたびに怖い思いをしました。
私は自分の部屋に子猫を寝かせ、何かあってもすぐに気付けるようにしました。

そして数週間後、ついに子猫は回復の兆しを見せ、次第に元気を取り戻してきたのです。
少しずつ遊び始めた子猫に、私たちは我が家の飼い犬たちを紹介し始めました。
すると子猫は怯えるどころか、ずっと以前からこの家にいたのは自分だと言わんばかりに王様のように振る舞ったのです。

父は、私が学校を卒業するまでは子猫を家で世話をしてもいいと言い出しました。
私はアレルギーの父や兄のために学校へ子猫を連れて行くことにしました。

結局、私が卒業した現在も、成長した猫は我が家にとどまっています。
子猫は、いつの間にか家族の心に忍び込み、家族のだれもが彼と離れたくないと思うようになったのです。
私たちは猫をドリッジーと呼ぶようになっていました。

ドリッジ―は我が家で最初の猫となり、窓際のベッドでのお昼寝が大のお気に入り、のびのびと暮らしていました。
そしてつい最近、我が家にはもう1匹の猫が家族に加わりました。
ドリッジーと新入りのストライプスはすぐに仲良くなり、いつも一緒に過しています。

ボロボロの状態で見つけたドリッジーは5年経った今、フワフワでゆったりとした猫に成長しました。
新しい家族を見つけるまでと許してもらったドリッジーでしたが、死の淵から見事に生還した彼は、いつの間にか私の家族の心にじわじわとその存在を大きくしていったのです。
ドリッジーとの出会いをきっかけに、私の家族にとっての猫はかけがえのない家族、なくてはならない存在になりました。