クッキーの息子は茶トラのメインクーンタイプで長くフサフサした毛をしていました。
クッキーはその日以来息子を連れて現れるようになり、私は彼をスクラッピーと呼びました。

クッキーたち親子が暮らしていたのは交通量の多い高速道路と繁華街に挟まれたゴミ捨て場のような空き地でした。
とても親子が安心して暮らせる環境ではありません。
私は2匹を保護し、家族に迎えることを決心しました。

2匹がご飯を食べているときがチャンスだと考えた私は、まず、スクラッピーを保護することに成功しました。
母親のクッキーに比べ、息子のスクラッピーはさほど警戒心が強い方ではありませんでした。
食事中の彼を抱き上げ、キャリーケースに入れて自宅に連れ帰ることができたのです。
私はスクラッピーを動物病院に連れて行き、付着していたたくさんのノミを取り除き、去勢手術を受けてもらいました。

次はクッキーの番です。
しかし、それは想像以上に大変なことでした。

もともと警戒心が強いクッキーは、息子を連れて行った私に対して不信感を抱き、以前にも増して距離を置くようになっていました。
クッキーの大事な息子を取り上げた罪悪感を感じつつ、私はクッキーのためにも先に保護したスクラッピーのためにも、彼女を保護するしかないと覚悟を決めていました。

予想はしていたものの、私はクッキーに再び近寄るまでにそれから1年かかりました。

今年の春、私にようやく近付くことを許したクッキーを一度は取り逃がしてしまいました。
食事中の彼女を後ろから抱え、そのまま車に乗せることができました。
ところが自宅で降ろそうとしたとき、彼女は私の腕を咬み逃げてしまったのです。
治療を受けた私はまだ諦めてはいませんでした。

私の自宅は野生動物保護地域でもあるゴルフ場の広い敷地の一角にあり、近隣にはアライグマ、キツネ、アルマジロ、オポッサム・・・たくさんの野生動物の姿を見ることができます。
そんな中でクッキーを見つけるのは至難の業でした。

しかしクッキーが近所にいることは間違いなかったので、その日の夜僅かな可能性に賭けてトラップを仕掛けたのです。

すると奇跡が起こりました。

早朝、トラップをチェックしに外に出た私は、ケージの中に光るふたつの瞳を見ました。
『まさか・・・』なんとそれはクッキーだったのです。

私はすぐにトラップをバスルームに運び、クッキーを出してあげました。
バスタオルでベッドを作り、たっぷりのご飯と水を傍に置きました。
クッキーが落ち着くまで、しばらくそっとしておくことにしたのです。

翌朝、クッキーの様子を見に行った私は予想もできなかった光景を目にすることになりました。

クッキーの様子を見に行くと、彼女は4匹の小さな子猫を出産していたのです。
クッキーは子猫のお世話の真最中でした。

クッキーはとてもきゃしゃなので私は彼女の妊娠に全く気付いていませんでした。
クッキーを保護できたことに喜んでいた私は、さらに彼女の大切な子猫まで保護していたのです。
誇らしそうなクッキーと小さな子猫の姿に、私はこの上ない喜びを感じました。
驚きと喜びでいっぱいの私は子猫に触れ、頭を撫でました。
嬉しいことにクッキーはそんな私を受け入れてくれたのです。
彼女が私に心を許した瞬間でした。

スクラッピーは久しぶりにママ・クッキーと再会を果たし、さらに4匹の小さな兄弟と対面することができました。
私は子猫たちにもそれぞれ名前を付けました。
スチュアート・リトル、パッチーズ、パッジ、カシュー。

私の決心が現実になったとき、クッキーは素敵なサプライズを用意してくれていました。
クッキーは私の家族を一気に増やしてくれたのです。

完全な野生で暮らしていたクッキーでしたが、我が家での暮らしにも慣れて少し体重を増やすことができました。
小さな息子たちに愛情を注ぎ、子育てに励んでいたクッキーは9か月を過ぎた今、子育てから解放されてのんびりと過ごすことができるようになりました。
クッキーとその息子たちと暮らす私は、とても賑やかに過ごしています。