『抱いてみますか?』
ベビーカーを押している女性が、中を覗き込んだ私ともう一人の女性に話しかけてきました。
『よかったら、子猫は差し上げますよ。』
女性は子猫たちを飼えないのでこれからシェルターに連れて行くのだと言いました。

数匹居る子猫の中には治療が必要そうな子猫がいました。
私は一番活発な子猫を抱きあげました。
子猫は私の胸に体を擦りつけ、ボールのように丸くなるとゴロゴロと喉を鳴らしました。
私はタキシードを着ているようなその子猫に決めました。
子猫たちのおかげでバスの中はいつもと違った和やかな雰囲気に包まれていました。

私は子猫をバッグに入れ、頭だけ出してあげました。
そのままショッピングセンターに入り、目的の自転車のチューブと修理に必要なものを買いました。
子猫はカートの上で興味津々、目をクリクリさせていました。

買い物を終え、自宅に戻った私は子猫をお風呂に入れました。
子猫はおそらく生後2か月から3ヶ月。

きれいになった子猫は、ご飯をお腹いっぱいに食べました。
お腹を満たした子猫は、ずっと私の家で暮らしていたみたいに家中を走り回っていました。

やっと落ち着いたかと思ったら眠くなったようです。
私は子猫をタオルでくるんであげました。
すると子猫はそのまま眠ってしまいました。
気持ちよさそうに、安心しきっているのかお腹を上にして寝ていました。
私は子猫をアイビーと呼ぶことにしました。

アイビーは私の家での暮らしにすぐに溶け込んでいきました。
私は、アイビーたちをシェルターに連れて行こうとしていた女性のことを考えていました。
何か子猫たちを飼えない事情があったらしいのですが、偶然乗り合わせた私はとてもラッキーだと思いました。
私の膝で無防備にお昼寝をしているアイビーは、すっかり私の家族になっていました。

私にはひとつクリアしなければならない問題がありました。
私にはママと言う唯一の家族がいました。
ママはこれまでほかのペットと暮らしたことがありません。
アイビーを迎えてただひとつの不安は、ママの反応でした。
半ば恐る恐るママにアイビーを紹介すると・・・意外にうまくいったのです。
ママは、アイビーを受け入れ、しばらくすると一緒にお昼寝をするようになりました。

順調に成長するアイビー。
彼女は初めて会ったとき、入ってもらったバッグが窮屈になってしまいました。
私が心配したママとの関係は、すごくいい感じ。
彼女たちは日を追うごとに仲良くなり、大親友になりました。
他の動物に一切興味を示さなかったママにとって、アイビーは例外だったようです。

バスでの出会いから1年。
アイビーは、フサフサの尻尾が自慢のちょっぴりゴージャスなタキシードに成長しました。
ベビーカーから逃げだしたくて、必死に鳴いていたアイビーたちの鳴き声がなければ、私は彼女たちに気付けなかったでしょう。
アイビーは、自分で幸せを掴もうとしていて、それに気付けた私は本当にラッキーでした。