当時のインスタンブールの街なかで撮影された写真には、段ボールを敷き、毛布にくるまった犬や、中にはブティックの店内で暖をとる野良犬達の様子を伝えるものもありました。
これは保護活動をしている人たちによるものではなく、寒さに震える犬達を見かねた近所の人々によるものだと伝えられています。

同じころ、インスタンブールのさらに西にあるテキルダーでは、歯科医のイルハンさんの自宅に続々と集まる野良猫の姿がありました。
2階の窓に続く1本の梯子。
梯子に向かって歩くのは、イルハンさんの近所に住む野良猫たちです。

梯子を上る猫たち。
2階の窓には猫たちを迎えるイルハンさんの顔がのぞいています。
例年にない寒さに襲われた今年のはじめ、近所の野良猫たちを心配したイルハンさんは何かをせずにはいられなかったと言います。

『今年のトルコの冬は今までに経験したことのない寒さです。私とお手伝いさんは暖かな部屋で過ごしていましたが、猫たちのことを想うと悲しかったし、心配でならなかったのです。』
そんなイルハンさんは温かな自宅を野良猫たちに開放することを想いつきました。

でもどうやって?
それがこの可愛らしい梯子でした。
イルハンさんは、2階の窓に続く約2mのはしごを取りつけ、カムフラージュを兼ねて花鉢を飾りました。
『花を置けば、梯子を気にする人はいないと思ったの。』
すると、猫たちはイルハンさんの思いやりにすぐに気付いてくれたそうです。
猫たちはイルハンさんの窓を目指して続々と集まってきました。

イルハンさんは家にやって来た野良猫たちに自宅の一部を開放し、ご飯をごちそうしていました。
日に日に寒さを増していた当時、イルハンさんの家には常時10匹近くの野良猫たちが集まり、その数を増やしていたそうです。
イルハンさんは休日になると、自宅にやってくる猫たちと殆どの時間を一緒に過し、お世話をしていました。

イルハンさんは言います。
『私の幸せは、動物が飢えずに好きなだけ水を飲めることです。世界は人間のためにあるのではありません。』
休日に近所の野良犬や野良猫たちのお世話でボランティア活動をしているイルハンさんにとって、野良猫たちを迎えるための梯子は特別なものではなく、ごく自然な行為だったそうです。
野良犬や野良猫たちに向けられるトルコの人々の思いやりに、胸が熱くなりました。