ある街に1年以上住み着いていた猫は、一度姿を消した後再び姿を現し、重傷を負った状態で地元のシェルターに運び込まれていました。
彼の手当てを試みたシェルターでしたが、彼の傷は思いのほかダメージが強く、手当をするに足りる設備も装備もそこにはありませんでした。
シェルターから助けを求められた私たちの施設は、猫を受け入れることにしました。

野良猫は、ナツメグと呼ばれていました。
ナツメグは、負傷してしばらくたって保護されたため、治療されなかった傷から感染症を起こしていました。
炎症は傷の周りから顎にかけての組織を壊死させ、その影響は顔全体に及んでいました。
野良猫だった彼はノミやダニの寄生が見られ、上気道にも感染症があり、
さらに彼を診察したカーライル獣医師は、ナツメグにエイズウィルスの陽性反応を認めました。

カーライル獣医師は、抗生物質の投与と後に手術を必要とするナツメグのために、レーザー治療を取り入れることにしました。
保護されて以来苦痛に歪んだ表情をしていたナツメグでしたが、穏やかな性格の彼は、獣医師や私たちが彼の回復のためにしていることを次第に理解していくようでした。
エイズは深い咬傷でのみ感染するため、私たちは攻撃的にならない穏やかなナツメグなら子猫とでも暮らせると感じていました。

炎症がおさまるにつれ、ナツメグは少しずつ本来の彼の顔に戻ってきたようです。
彼は治療が自分のためであると理解していて、診察台に自分から上がるようになっていました。
彼の我慢強さと穏やかさに、私たちの方が癒されていました。

カーライル獣医師は、ナツメグの炎症がおさまらない限り傷を塞ぐ手術はできないと判断していました。
もし手術を急げば、彼の身体への負担は大きく循環器への影響が懸念されると考えていたのです。

ようやく炎症が落ち着いたナツメグは、その後2度にわたる手術に耐え、彼本来の姿を取り戻して行きました。
ナツメグの顔に少しずつ笑顔が戻り、それは私たちスタッフに深い喜びを与えてくれました。
命の危険にさらされたナツメグは、負傷して以来苦痛と戦い続けていまいました。
手術を終えたナツメグは、私たちに甘えてくるときこぼれるような笑顔を見せるようになっていました。

施設のSNSでナツメグを知ったたくさんの人たちから、励ましの訪問やメッセージが届けられるようになっていました。
ナツメグの回復に合わせ、新しい家族を探し始めた私たちは、彼を引き取りたいというたくさんの人達を前に、喜びと同時にナツメグの未来を決定する責任の重さを痛感していました。

そして、ナツメグはあるご夫婦のもとへ旅立って行きました。
ナツメグの新しい家族のところには、もう1匹、母親を亡くして保護された猫が暮らしていました。
優しいご夫婦のもと、親友と暮らし始めたナツメグは生き生きと目を輝かせています。
長く苦しい旅を終え、ナツメグはようやく自分の家に辿り着くことができました。