私たちが引っ越してきて間もない、お昼過ぎのことでした。
1匹のフワフワの猫が我が家のテラスに現れ、家の中を伺っていました。
私が外に出て、猫に近づくと猫が鳴きました。
『ハイ!』私には猫が挨拶をしたように思えました。
猫はシンバという我が家のお隣さんの飼い猫でした。

それ以来、シンバはときどき我が家のテラスに姿を見せ、我が家の様子を伺うようになっていました。
我が家にはエラという17歳の猫がいました。
エラは訪れたシンバを見ていましたが、彼女の方から近付くことはありませんでした。
でもやっぱり気になるのか、ガラスのこちら側からシンバの様子を見ていました。
それはとても微笑ましかったのです。

7月のはじめ、我が家の猫エラは腎不全のために17歳で亡くなりました。
エラは、家族の中でも一番私に懐いていて、いつも私の後を付いてまわっていました。
そんなエラがいなくなってしまい、私の心には大きな穴がぽっかりと開いてしまったようでした。

エラが亡くなって数週間が経った頃、シンバは前にもまして我が家を訪れるようになりました。
フロントポーチの階段で私と時間を過ごしてくれました。
シンバのお気に入りは、私の車に乗り込んでお昼寝をすることでした。
後部座席にちょこんと座り、居心地よさそうに上機嫌になるのです。

毎日のように現れるシンバに、私はどれほど慰められたかしれません。
そのことをお隣さんに話すと、とても驚いていました。
シンバはお隣さんの車で一度もそんなことをしたことがないというのです。
『シンバは本当にあなたのことを心配しているのね。』お隣さんはそう言って嬉しそうに微笑んでいました。

シンバは私の心の中を全て理解しているとしか思えませんでした。
彼は、しばらくの間テラスで私と過ごすと、家に帰っていきます。
シンバが私に寄り添ってくれたことで、エラを失った私の心はゆっくりと満たされ、温かく感じられるようになったのです。

シンバの訪問を私と一緒に喜んでくれたお隣さんと、シンバに私は感謝しています。
今でもシンバは、我が家を訪れ私との時間を持ち続けています。
私はシンバの訪問をとても大切にしています。