相談を受けた私たちは、今迄にたくさんの保護猫を育てた経験がありました。
子猫が一向にミルクを飲もうとしないことに、どうすることもできなかった彼女は困り果てて電話をよこしたのです。
子猫を引き取るために駆けつけた私たちは、トレーラー・パークの周囲に子猫の母猫がいないか探してみたのですが、母猫もほかの猫の姿も見当たりませんでした。

子猫の皮膚は弾力を失い脱水症状を起こしていることは明らかで、とても危険な状態でした。
子猫をキャリーケースに入れ、自宅に戻る途中で電解質飲料を購入し子猫用のご飯と半分ずつの割合で混ぜて子猫に与えてみました。
一刻も早く、水分を補給しなくてはならないと考えたからでした。
しかし子猫は口せず、鳴き続けていました。

我が家に連れ帰った子猫は、柔らかい毛布の感触をとても気に入ったようでしたが、相変わらずなにも食べようとはしませんでした。
私たちは小猫をメイビスと呼ぶことにしました。
メイビスは、妻がミルクを飲ませようと哺乳瓶やシリンジを試してみるのですが、一切口に含もうとせずひたすら拒否し続けていました。

メイビスの体重は約90gほどしかなく、体温が低い状態が続いていました。
なんとか栄養を摂らせたいと、栄養補助食品を与えてみましたが、メイビスはこれも拒否。
そんな中、メイビスに何とか栄養を取らせようと懸命になっていた妻は、コウモリの保護団体がスポンジに含ませたエサを与えて飼育していることを思い出しました。
早朝の午前3時、妻は、細かくしたスポンジのブロックの先端に栄養補助食品を浸み込ませてメイビスの口元へ運びました。
すると、メイビスはそのスポンジから少しずつ食べ始めたのです。
ようやく栄養のあるものを口にし始めたメイビスは、それから数日少しずつ体重を増やしていきました。

ところが、メイビスが鳴くのを止め、妻はメイビスの目に異変を感じました。
急いで動物病院へ連れて行くと、獣医師は上気道感染症と目の感染症の兆候が見られると言ったのです。
メイビスの僅かな異変に気付いた妻のおかげで、初期段階での発見ができ大事には至らずに済みました。
獣医師は目の軟膏と抗生物質を処方し、メイビスが離乳するまでは毎週診察に来るようにと妻に指示をくれました。

妻は、メイビスの時間ごとのご飯のために真夜中も起きて世話をし、体をきれいにして、排泄を助けました。
とても危険な状態からメイビスが徐々に回復していったのは、なんといっても妻の献身的なお世話のおかげだと、私は感謝しています。
私ですか?
私は・・・写真を撮ったり、お湯を持って行ったり妻に言われるがまま、ちょっと手伝うくらいしかできませんでした。

メイビスが通院をはじめて2週間が経過しました。
獣医師が驚くほど元気を取り戻したメイビスは、お腹いっぱいに食べるとお気に入りの毛布でぐっすりと眠るようになりました。
獣医師は、妻がスポンジでミルクを与えていたことにとても興味を持っていました。そんな方法は初めてだと驚いていたのです。
メイビスのために懸命だった妻は、ホッとすると同時に、これからの楽しみが増えたとよりいっそう張り切っていますよ。